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フェイスブックとインスタグラムの親会社メタ・プラットフォームズ(通称Meta)は27日、11月に行われる米国議会の中間選挙に先立ち、同国世論の分断や混乱を目的とする中国の工作活動を検知したとして、それらのソーシャルメディアアカウントを削除したと発表した。だが、過去2回の大統領選挙で関与したとされるロシアの世論誘導に比べ、中国による工作活動は範囲が限られ、時として稚拙だったという。

Metaの報告によると、フェイクアカウントによる投稿は昨年11月にフェイスブックとインスタグラムのほか、ツイッターでも散見されるようになった。ただ、特徴的だったのは、「スーツ姿の男性のプロフィール写真を使いながらも女性名のアカウント」というものだった。
それらのユーザーはバイデン大統領を批判し、保守層のアメリカ人を装って銃を所有する権利や妊娠中絶反対を主張。一方、今年4月までには、主にフロリダやテキサス、カリフォルニアなどの州出身のリベラル派に成りすました偽アカウントが、銃所持に反対し、妊娠中絶の権利を訴えた。だが、致命的だったのは、彼らの英語力がひどすぎて、フォロワーを増やすことができなかったというのだ。

Metaの関係者によると、この活動が特定のグループや個人によるものであるとは断定できないが、その戦術は、中国共産党の政治的、外交的主張を広めるために世界のソーシャルメディアを利用するという従来の手口だ。それでも今回の工作活動が異例だったのは、中間選挙に先立ち、国内の政治的分断に焦点を当てたことだと米紙ニューヨーク・タイムズは指摘する。
以前の宣伝活動で中国のプロパガンダ装置は、香港での政治的権利の取り締まりや、新疆ウイグル自治区での大規模弾圧などへの非難に対し、中国政府の正当性を訴えながら、より広く米国の外交政策を批判することに集中していたからだ。
Metaのグローバル脅威情報(GTI)担当者ベン・ニモ氏は、今回は「中国の影響工作の新たな方向性」を反映していると指摘。これまでのように、「米国について世界中の人たちに語りかけるのではなく、アメリカ人のふりをして、アメリカ人に話しかけること」だと説明。「つまり、工作活動自体は小さいが、それが変化だ」と付け加えた。
ニューヨーク・タイムズ紙は、この工作活動が緊急性と視野に欠けているように見え、その野心と目標について疑問が生じているという。関与したのはフェイスブックのアカウント81件と8つホームページ、および1つのグループだけ。7月までに、この工作活動は突然、舞台を米国からチェコに移したというのだ。
また、投稿がアップされたのは主に中国の勤務時間中で、米国では深夜の時間帯。おまけに、「昼休み」と思われる時間帯には投稿が著しく減った。

工作活動は失敗に終わったとするMetaが今回、その事実を開示した目的は、中国が対立関係にある国に対して仕掛ける謀略の潜在的脅威に注意を向けさせることだとニモ氏は説明した。