2022-09-28 政治・国際

天体衝突を回避させる〝地球防衛作戦〟NASA無人探査機が小惑星に体当たり

注目ポイント

ハリウッド映画「アルマゲドン」を地で行く試みだ。米航空宇宙局(NASA)は26日、天体の衝突から地球を守る「プラネタリー・ディフェンス(惑星防護)」という取り組みで、無人探査機「DART」を小惑星に体当たりさせるという人類史上初の実験に成功したと発表した。この衝突により、どの程度小惑星の軌道を変えることができたのかは今後確認される。

2つの長方形のソーラーパネルを搭載した、自動販売機ほどの大きさの立方体のDART。Photo Credit: AP / 達志影像

米国・メリーランド州ローレルにあるジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所に置かれたNASAのミッション・オペレーション・センターからのライブ配信では、同日午後7時14分(米東部時間)、地球から約1100万キロ離れた宇宙空間で、2つの長方形のソーラーパネルを搭載した、自動販売機ほどの大きさの立方体のDARTが、小惑星「ディモルファス」に突入して行く画像が写し出された。

 

予算3億3000万ドル(約480億円)を投じたこの計画は、開発に約7年を要し、無人探査機を衝突させることにより、純粋に動力だけで小惑星の軌道を変えることができるかどうかを試すために考案された。DARTはDouble Asteroid Redirection Testの頭文字を取ったもので、2つの小惑星の軌道変更実験を意味する。

 

実験が目的を達成できたかどうかは来月判明する。そのためNASAは、衝突前にDARTから分離した小型探査機に搭載したカメラの画像や、地球や宇宙にある望遠鏡による観測で、軌道の変化や衝突時の詳しい様子の解析を進めるとしている。

 

パーム・メルロイNASA副長官はDARTが目標をとらえて衝突を果たした後、「NASAは人類の利益のために活動しているが、この実験は究極の使命だ。こうした実験がいつの日か、我々の地球を救うことになるだろう」と記者団に語った。

NASA副長官, パーム・メルロイ。Photo Credit: Reuters /達志影像

 

2021年11月、SpaceXのロケットによって打ち上げられたDARTは、NASAの指導の下で飛行の大部分を行い、旅の最後の数時間で搭載ナビゲーションシステムによる自動制御に切り替えられた。

2021年11月、SpaceXのロケットによって打ち上げられたDART。Photo Credit: AP / 達志影像

 

その様子はジョンズ・ホプキンズ大のミッション・オペレーション・センターからほぼリアルタイムでモニターされた。最終局面では、DARTの搭載カメラで撮影された標的の小惑星の秒単位の画像がだんだん大きくなり、信号が失われる寸前にはディモルフォスの地表がモニター画面を覆い尽くすと、制御室では歓声が起き、DARTが狙い通り衝突したことが確認された。速報値の計算によると、衝突地点はディモルフォスの中心から17メートルしか外れていなかった。

 

ディモルフォスは別の小惑星「ディディモス」の周囲を約12時間の周期で回っている。NASAは、どちらの惑星も実際、地球に脅威を与える存在ではなく、今回の実験で意図せず新しい危険性を生み出す可能性もないとしている。

 

ロイター通信によると、約6600万年前に地球に衝突し、恐竜を含む世界の動植物種の約4分の3を絶滅させたという小惑星「チクシュルーブ」と比べると、直径約160メートルのディモルフォスと、その約5倍(約780メートル)の直径を持つディディモスはどちらも小さい。

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