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ロシア国内で反プーチンの動きが活発化している。プーチン大統領がウクライナ侵攻をめぐり、予備役の「部分的な動員令」を発動したことに対する抗議行動がロシア各地で続き、21日には全国で1300人以上が逮捕されるという事態になっている。一方、同大統領の元側近が英国への「核攻撃ありえる」と発言したことで、深刻な懸念と同時にプーチン氏が「相当追い込まれている」との受け止め方が広がっている。
この発言を受け、米国のサリバン大統領補佐官はロシアが核兵器の使用に踏み切った場合、「ロシアにとって破滅的な結果になる」と水面下で警告したことを明らかにした。
サリバン補佐官は25日、米ABCのテレビ番組で、ロシアが国民の一部動員を発表したことなどについて、「強さや自信の表れではなく、ロシアとプーチン氏がひどく苦しんでいる証拠だ」と指摘。米政府として不測の事態に備え、「同盟国などとともに断固として対応する」と強調した。
また、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官はBBCに、「明らかにウクライナで敗れつつある戦争の文脈で、プーチン氏がこのようなレトリックを使うのは危険な前例となる」と述べた。
同氏は、「我々はこうした脅しを真剣に受け止めなくてはならないし、受け止めている。(中略)できる限りロシアの核攻撃能力を監視し続けている。現時点で戦略的抑止態勢を変更しなくてはならない兆候は見受けられない」と述べた。
その上で、「現代の核保有国が、核兵器の使用の可能性についてあのような形で言及するのは、無責任だ。誰も得しない」と批判した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、「核兵器を使用してもロシアに恩恵をもたらすシナリオは考えにくいというのが、専門家の共通した意見だ」と伝えた。
ロシアが仮に第2次世界大戦以降のタブーを破って核兵器の使用に踏み切れば、多くのシナリオにおいて、ロシアはさらに窮地に追い込まれると想定される。そうなれば、ウクライナ侵攻以降もロシアへの支持を表明していた数少ない友好国すら、失う恐れがあると同紙は指摘した。
英シンクタンク「紛争研究リサーチセンター」のキール・ジャイルズ氏は、「ロシアの脅しにばかり気を取られて、ロシアが核兵器を使用した場合、実際にどのような利益が得られるのかについては何も語られていない。その理由の一つは、ロシアのプロパガンダ工作があまりに奏功しており、ウクライナへの支援に歯止めがかかっているからだ」と解説した。