2022-09-26 政治・国際

予備役の部分動員令にロシアで抗議デモ拡大 追い込まれたプーチン大統領は再び核の脅し

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

ロシア国内で反プーチンの動きが活発化している。プーチン大統領がウクライナ侵攻をめぐり、予備役の「部分的な動員令」を発動したことに対する抗議行動がロシア各地で続き、21日には全国で1300人以上が逮捕されるという事態になっている。一方、同大統領の元側近が英国への「核攻撃ありえる」と発言したことで、深刻な懸念と同時にプーチン氏が「相当追い込まれている」との受け止め方が広がっている。

プーチン大統領は21日、予備役の部分動員令を発表。これに反対する抗議デモが24日、モスクワや第2の都市サンクトペテルブルクなど各地で行われた。人権団体「OVDインフォ」によると、治安当局は計32都市で730人以上を拘束。21日のデモでも1300人以上が拘束され、社会不安が拡大している。

AFP通信は、モスクワでは女性のデモ参加者が警官に逮捕される際、「私たちは大砲の餌食になるための使い捨てではない」と叫ぶ様子を目撃したと報じた。サンクトペテルブルクでは、「プーチンのために戦争に行きたくない」と記者団に語る男性もいたという。

ナターリャ・ドゥボワさん(70)はAFP通信に対し、自分は戦争に反対していて、前線に送られる「若者たちのことを案じている」と述べた。

英BBCによると、プーチン氏は24日、「降伏あるいは脱走を試みたり、戦闘を拒否した兵士に対し、最大10年の禁錮刑を科す」と新たな法案に署名した。さらに、1年間兵役についた外国人に、ロシア市民権を与えることを定めた法案にも署名した。

ロシアの市民権を得るためには通常、義務付けられる5年間の居住実績が免除されることになり、ロシア政府がいかに深刻な兵力不足に直面しているかを示唆しているとBBCは伝えた。

また、国外に拠点を置くロシアの独立系メディア「メドゥーザ」は23日、政府筋の話として部分動員令は120万人を対象としていると報道。ショイグ国防相が当初対象とした30万人の4倍に当たる。メドゥーザは当局筋の話として、これまではほとんど動員要請されなかったモスクワで1万6000人、サンクトペテルブルクでも3200人を招集する計画だとしている。

これに対し、米シンクタンク「戦争研究所」は、部分動員令が今後数か月間の戦況に変化を与えないとし、冬にかけてのウクライナ軍による占領地奪還にも影響しないと分析した。ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、自発的か動員かにかかわらずロシア軍を撃退すると強調している。

一方、プーチン大統領の元側近で政治学者のセルゲイ・マルコフ氏は21日、「(英国の)トラス首相がまだロシアを破壊する計画を持っているなら、ロンドンに住む人たちは核兵器の脅威を理解すべきだ」とBBCのラジオ番組で言い放った。

マルコフ氏はまた、「あなたの町がターゲットとなるだろう」とも発言し、英メディアは「驚くべき警告が発せられた」と報じた。

プーチン氏も同日、国民向けのビデオ演説で部分動員令の発動を宣言した際、ロシアの領土的一体性が脅かされれば、「あらゆる手段を使ってロシアと国民を守る。これは、はったりではない」と強調してみせた。

この発言を受け、米国のサリバン大統領補佐官はロシアが核兵器の使用に踏み切った場合、「ロシアにとって破滅的な結果になる」と水面下で警告したことを明らかにした。

サリバン補佐官は25日、米ABCのテレビ番組で、ロシアが国民の一部動員を発表したことなどについて、「強さや自信の表れではなく、ロシアとプーチン氏がひどく苦しんでいる証拠だ」と指摘。米政府として不測の事態に備え、「同盟国などとともに断固として対応する」と強調した。

また、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官はBBCに、「明らかにウクライナで敗れつつある戦争の文脈で、プーチン氏がこのようなレトリックを使うのは危険な前例となる」と述べた。

同氏は、「我々はこうした脅しを真剣に受け止めなくてはならないし、受け止めている。(中略)できる限りロシアの核攻撃能力を監視し続けている。現時点で戦略的抑止態勢を変更しなくてはならない兆候は見受けられない」と述べた。

その上で、「現代の核保有国が、核兵器の使用の可能性についてあのような形で言及するのは、無責任だ。誰も得しない」と批判した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、「核兵器を使用してもロシアに恩恵をもたらすシナリオは考えにくいというのが、専門家の共通した意見だ」と伝えた。

ロシアが仮に第2次世界大戦以降のタブーを破って核兵器の使用に踏み切れば、多くのシナリオにおいて、ロシアはさらに窮地に追い込まれると想定される。そうなれば、ウクライナ侵攻以降もロシアへの支持を表明していた数少ない友好国すら、失う恐れがあると同紙は指摘した。

英シンクタンク「紛争研究リサーチセンター」のキール・ジャイルズ氏は、「ロシアの脅しにばかり気を取られて、ロシアが核兵器を使用した場合、実際にどのような利益が得られるのかについては何も語られていない。その理由の一つは、ロシアのプロパガンダ工作があまりに奏功しており、ウクライナへの支援に歯止めがかかっているからだ」と解説した。


 


 

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