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英国史上最年長の73歳で王位に就いたチャールズ国王。一般社会なら多くの人がすでに退職した年齢だが、同じような境遇で即位した国王は過去にもいた。それが高祖父エドワード7世だ。母親ビクトリア女王の跡を継いで、即位した時はすでに59歳。当時としては高齢だった。それでも、名君として成功を収めたことを例に挙げ、チャールズ新国王にもその可能性は十分ある、と本人を知る英紙サンデー・タイムズの元編集局長マーティン・イヴェンス氏は米ブルームバーグへの寄稿でそう記した。
新国王即位にあたりイヴェンス氏は、チャールズ国王が中年時から付きまとう陰気さと自己憐憫の表情を脱ぎ捨てたほうがいいとアドバイスする。「若い時は遊び心にあふれていた」とした上で「何年も前、(皇太子時代の訪米で)ハーバード大学を訪れた際、私は彼と冗談を交わしたが、タブロイド紙の記者たちは彼の前で少し居心地が悪そうに見えた。そんな臣民に対して、安心感を与えるのも君主の仕事だ」と苦言を呈した。
祖先と同様、チャールズ国王もまた鋭い知性を持つとイヴェン氏は指摘。例えば、気候変動の理解において先見の明があったが、それについては十分な評価を受けていないという。だが、知性が君主の人気を保証するものではないとし、英国人の国民性として知識人を警戒し、宗教を嫌うと解説する。
17世紀の国王チャールズ1世は芸術愛好家だったが、絶対王政を強めたため議会と対立し、反対派により処刑された。また、同じく芸術を愛した14世紀のリチャード2世は、中世の暗黒時代を象徴する幽閉という陰惨な形で最期を迎えた。近世ではイングランド南部ブライトの華やかな離宮「ロイヤル・パビリオン」をはじめ、贅を尽くしたジョージ4世は臣民から嫌われ、王家の名声を地に落としたとされる。それに比べ、エリザベス女王の競馬愛は、庶民の好みに合っていたとイヴェンス氏は言う。
では、チャールズ国王はどのような姿勢で治政にあたれば正解なのか。エドワード7世は時代遅れの宮殿組織を近代化するため、経済界との人脈を利用した。イヴェンス氏はチャールズも君主制を根本的に合理化するべきであり、そうするだろうと予想。
例えば、未成年少女の買春疑惑で謹慎中の弟アンドルー王子(62)の問題もその一つだ。また、和解ではないにしても、息子ヘンリー王子(37)と休戦すべきだと主張する。ヘンリー王子は母ダイアナ妃が受けた王室による処遇を今も許しておらず、妻メーガン妃に対するどんな些細なことにも過剰に反応している。
王族を直系だけに絞り込む王室のスリム化は、皇太子時代からチャールズ国王が公言してきた重要な課題だ。

王室内だけでも山積みの問題を解決することは気が遠くなるような話だが、エドワード7世など祖先が示したように、即位が遅くなったとしても、チャールズ国王は自身の治世を実り豊かなものにすることは可能だとイヴェンス氏は結んだ。