2022-09-14 政治・国際

英国史上最年長で即位したチャールズ国王 高齢で戴冠したエドワード7世から学ぶもの

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注目ポイント

英国史上最年長の73歳で王位に就いたチャールズ国王。一般社会なら多くの人がすでに退職した年齢だが、同じような境遇で即位した国王は過去にもいた。それが高祖父エドワード7世だ。母親ビクトリア女王の跡を継いで、即位した時はすでに59歳。当時としては高齢だった。それでも、名君として成功を収めたことを例に挙げ、チャールズ新国王にもその可能性は十分ある、と本人を知る英紙サンデー・タイムズの元編集局長マーティン・イヴェンス氏は米ブルームバーグへの寄稿でそう記した。

エドワード7世元英国王(モロクロ写真)とチャールズ3世英国王(カラー写真)Photo Credit: AP / 達志影像

エドワード7世は、エリザベス女王の在位70年に次ぐ、63年という長期にわたり君臨したビクトリア女王の長男で、家族からは〝バーティ〟の愛称で呼ばれた。在位は1901~1910年の10年間という限られた期間だったが、その治政は「エドワード朝」と呼ばれ、君主として大成した。

エドワード7世は政治的に分断した国内を再び一つにまとめ上げ、外交ではフランスとの同盟への道を開くことで、英国の孤立を終わらせることにも貢献。イヴェンス氏によると、今日の英国もEU(欧州連合)離脱をめぐり国内が2分し、欧州内で孤立の危機を招いた状況が当時と似ているという。

エドワード7世(左)は1907年、ドイツに訪れた。Photo Credit: AP / 達志影像

エドワード7世はソールズベリー首相など、保守党の政治家と近すぎると非難されることもあったが、即位後は政権交代した自由党政府に協力。ビクトリア女王とは異なり、政権から相談を受けたり、支持したり、注意を促すなど、国王が持つ憲法上の限界を理解し、行動したという。

同様に、チャールズ国王は〝干渉君主制〟を企んでいると批判されたことがあった。2004年と05年に閣僚に宛てた、いわゆる〝黒いクモのメモ〟(手書きの文字がクモのようだったため)と呼ばれた書簡は、政策に圧力をかけたとされ、報道機関は色めき立った。ところが、情報公開請求により公開された問題のメモは、「たわいのない、善意によるもの」だったことが分かったとイヴェンス氏は解説した。

自分の考えを主張しがちなチャールズ国王は、それをコントロールできるか疑問視する声もある。だが、当時皇太子だったチャールズ国王は、70歳の誕生日の英BBCとのインタビューで、自分は国王になったら政治的発言は止めると公言し、「私はそれほどバカではない」と付け加えた。

9日に即位して初めての演説でチャールズ国王は、自分に与えられた役割の変化の意味を理解していると強調したが、イヴェンス氏は、気性の激しい性格がどれほど簡単に適応できるかは定かではないとしている。

その一つが、国王として個人的に不愉快な法律にも署名しなければならないことだ。また、公式の場で、不愛想な外国要人をゲストとしてもてなす必要もある。先代のエリザベス女王は、これら全てを微笑み、もしくは、しかめっ面の二択でこなしたとイヴェンス氏。

同氏はまた、エドワード7世とチャールズ国王の奇遇なつながりを紹介した。チャールズ国王の愛人から妻となったカミラ王妃は、エドワード7世の愛人アリス・ケッペルの曾孫だった。ただし、大きな違いは、エドワード7世は不貞を繰り返したにもかかわらず離婚には反対していたのに対し、チャールズ国王は愛する女性と結婚するため、妻だったダイアナ妃を“捨てた”ことだ。

チャールズ3世国王と王妃カミラ。Photo Credit: AP / 達志影像

新国王即位にあたりイヴェンス氏は、チャールズ国王が中年時から付きまとう陰気さと自己憐憫の表情を脱ぎ捨てたほうがいいとアドバイスする。「若い時は遊び心にあふれていた」とした上で「何年も前、(皇太子時代の訪米で)ハーバード大学を訪れた際、私は彼と冗談を交わしたが、タブロイド紙の記者たちは彼の前で少し居心地が悪そうに見えた。そんな臣民に対して、安心感を与えるのも君主の仕事だ」と苦言を呈した。

祖先と同様、チャールズ国王もまた鋭い知性を持つとイヴェン氏は指摘。例えば、気候変動の理解において先見の明があったが、それについては十分な評価を受けていないという。だが、知性が君主の人気を保証するものではないとし、英国人の国民性として知識人を警戒し、宗教を嫌うと解説する。

17世紀の国王チャールズ1世は芸術愛好家だったが、絶対王政を強めたため議会と対立し、反対派により処刑された。また、同じく芸術を愛した14世紀のリチャード2世は、中世の暗黒時代を象徴する幽閉という陰惨な形で最期を迎えた。近世ではイングランド南部ブライトの華やかな離宮「ロイヤル・パビリオン」をはじめ、贅を尽くしたジョージ4世は臣民から嫌われ、王家の名声を地に落としたとされる。それに比べ、エリザベス女王の競馬愛は、庶民の好みに合っていたとイヴェンス氏は言う。

では、チャールズ国王はどのような姿勢で治政にあたれば正解なのか。エドワード7世は時代遅れの宮殿組織を近代化するため、経済界との人脈を利用した。イヴェンス氏はチャールズも君主制を根本的に合理化するべきであり、そうするだろうと予想。

例えば、未成年少女の買春疑惑で謹慎中の弟アンドルー王子(62)の問題もその一つだ。また、和解ではないにしても、息子ヘンリー王子(37)と休戦すべきだと主張する。ヘンリー王子は母ダイアナ妃が受けた王室による処遇を今も許しておらず、妻メーガン妃に対するどんな些細なことにも過剰に反応している。

王族を直系だけに絞り込む王室のスリム化は、皇太子時代からチャールズ国王が公言してきた重要な課題だ。

チャールズ3世国王。Photo Credit: AP / 達志影像

王室内だけでも山積みの問題を解決することは気が遠くなるような話だが、エドワード7世など祖先が示したように、即位が遅くなったとしても、チャールズ国王は自身の治世を実り豊かなものにすることは可能だとイヴェンス氏は結んだ。


 


 


 

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