2022-09-13 政治・国際

台風が来なくなった台湾―風も怖いし水不足も怖い―

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像

注目ポイント

最近3年間、台風の進路に異変が起きている。日本の台風シーズンは晩夏から秋にかけてだが、台湾では5月から9月くらいまで年平均3~4個の台風が上陸していた。しかし2020年以降一つも台湾に来ていない。これははたして台湾人にとっていいことと言えるのか?

台風による休みは行政が県ごとに発表≫

台風が近づくと、台湾のどのあたりに上陸するかによって行政院人事行政局が翌日の仕事や学校を一斉に休みにするかどうか発表する。これを「停班停課情報」と言う。「班」とは会社や店、工場など、「課」とは幼稚園から大学までの学校の意味である。原則として政府機関と学校に限るが、台湾に来た日本人が驚くのは、民間企業もこれに倣って一斉に休むということだ。休みになって喜ぶ人は学生と会社員、労働者に多く、嫌がる人は経営者に多い。ここ2,3年は台風休みがなくなってがっかりしている学生もいる。台風の進路が微妙な地域では、行政が停班停課にした後で台風がそれてしまい、市民から文句を言われるケースや、学校は休みだが仕事は休みにしないという決定をして、小さい子がいる核家族の親から、「子供の面倒は誰が見るんだ」というクレームを入れられたりしたものだ。また県境に住み、越境通勤や通学をしているケースでは、県によって停班停課の決定が違い右往左往する家族もいて、毎年何らかのトラブルがニュースになった。これも台湾の風物詩のひとつとなっていた。

しかし2020年から22年の9月まで台風は一つも台湾に上陸していない。

 

≪台風はなぜ台湾へ来ない?≫

台風のコースは大気の流れと気圧及び海水の温度によって決まる。一般的に台風は高気圧の淵に沿うように進むので、高気圧が南寄りの時、台風は往々にして台湾上陸のコースをとるが、北寄りだと日本に行く。気象学者は西南モンスーンに乗って高気圧が北に押し上げられ、その結果ここ数年の台風は台湾に上陸しないで北上するのではないかという。

≪前門の虎後門の狼≫

気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の予測によると、これまで台湾に年3~4個台風が来ていたが、将来は1~2個になり、ほとんどの台風は北寄りのコースをとって日本へ行く。2018年に発生した台風はすべて日本へ行って甚大な被害をもたらしたのは記憶に新しい。

台湾に来る台風は少なくなったが、来るとなると超大型台風になる可能性が増えた。さらに台風が来ないことによって短時間に雷を伴う集中豪雨、ゲリラ豪雨が頻繁に発生する恐れもある。現に今年の夏は午後になると雷鳴とともにバケツをひっくり返したような豪雨に襲われる日が何日もあった。都市部では降水量が一時間当たり50㎜を超えると洪水になりやすいと言われるが、線状降水帯の通過やゲリラ豪雨によって150~200㎜もの雨が集中的に降り、都市部は大洪水となる。台風が来ないことでもう一つ困ることがある。台湾の水源は半分以上が台風の雨である。夏の台風が十分に雨を降らせなければ、翌年の春雨(日本人が持つ「春雨」のイメージと違い、大雨が長時間降ることが多い)を緊張しながら待つことになる。先週末(9月3~4日)と今週末、台風11号と12号が台湾に近づいた。幸か不幸か二つとも外縁の雨雲が台湾全域に雨を降らせ、ダムなどの水源をある程度潤している。

台風が来たら来たで暴風被害、来なかったら水問題、できればどちらも避けたい。ありふれた言い方だが、「風調雨順」が大切である。公による防災対策と私たち自身の自己防衛をしっかりと施したうえで風や雨と上手に付き合っていくしかない。


 



 

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