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ロシアのウクライナ侵攻から200日、戦況が大きく変わりつつある。ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、同国東部ハリコフ州の重要拠点イジュームを奪還したと宣言した。先週末までにウクライナ軍は同州30か所以上をロシア軍から取り戻し、南部でも反攻が着実に進行。ロシア軍の防衛線が崩壊する可能性も浮上し、侵攻以来最大の転換期を迎えている。
英BBCは、ロシア軍が10日、ウクライナの奇襲作戦を受け、東部ハルキウ州の要衝から撤退したと伝えた。一方、ウクライナ当局は同日、同国軍の部隊がロシア軍の重要な補給拠点となっている同州クプヤンシクに入ったと明らかにした。
クプヤンシクはロシア軍が事実上支配した東南部ドンバス地方(ドネツク、ルガンスク両州)への補給ルートで、英国防省は「クプヤンシクを喪失すればロシア軍にとって大打撃となる」と分析した。
ロシア国防省はその後、軍を「再編成」するため、クプヤンシク近郊の重要拠点イジュームから撤退したと発表。また、ドネツク地方の前線での「取り組みを強化する」ため、ハルキウ州第3の要衝バラクリヤから部隊が撤退したことも認めた。
ロイター通信によると、ハルキウ州でのウクライナ軍の兵力は、ロシア軍および親ロシア派の8倍だったとの見方を示した。同州のロシア当局者、ビタリー・ガンチェフ氏はロシア国営テレビで、ウクライナ軍はロシアがこれまでに制圧した同州北部の集落を奪還、ロシアとの国境に迫ったと述べ、「約5000人の民間人がロシアに避難した」と語った。
「状況は刻々と厳しくなっている」とし、ロシア・ベルゴロド州との国境は現在閉鎖されているとした。ロイター通信は、戦況に関する発言が事実かどうか確認できていないとしている。
また、南部ヘルソン州でも反攻が進んでおり、ロシア軍は東部と南部の2方面で圧力を受けているという。BBCは、ウクライナ軍がこのまま前進を維持できれば、ロシア軍がウクライナの首都キーウ周辺から撤退して以来の「大敗北」で、戦況の最も重要な転換期になるとしている。
ゼレンスキー大統領は10日の定例ビデオ声明で、ウクライナ軍が今月初めに新たな反攻作戦を開始して以降、日本でいえば神奈川県の面積を上回る2500平方キロメートルの領土をロシア軍から奪還したと述べた。大統領は8日には、過去1週間で1000平方キロメートル以上の領土を取り返したと発表しており、それからわずか2日でその2倍半の領土からロシア軍を追い払ったことになる。
そんなウクライナ軍の猛烈な反攻を示すように、東部や南部の占領地域でロシアが計画しているロシアへの併合を問う住民投票について、プーチン政権が無期限延期を決めた。国外で報道を続けるロシア系独立メディア「メドゥーザ」は11日、ロシア大統領府に近い筋の情報として伝えたもので、ハルキウ州でのウクライナ軍の猛攻が決定的な理由になったとしている。