注目ポイント
日本の町内会長にあたる「里長」の立候補者が変わってきた。これまでの里長は商店街のオヤジさんか定年退職のおじいさんというイメージが強かったが、今回は、市議会議員立候補者だけではなく、里長選にも被選挙権を手に入れたばかりの若い女性の出馬が急増した。
≪里長とは≫
法律を作ったり国民の陳情を聞いたりする仕事をする政治家の長(おさ)が首相(台湾では総統又は行政院長がこれに相当する)なら、県には県知事(県長)、市には市長、区には区長がいる。台湾の基礎行政区画は市、区、里、鄰となっており、自分の住む地域の一番身近な区画は里である。台湾ではこの町内会長にあたる役職を「里長」と呼ぶ。日本の場合、町内会長は政治はしない。しかし台湾の里長は政治的役割もしっかり持っている。例えば、11月の台北市長選で、3人の市長立候補者はそれぞれ仲間の里長を尊重して接触している。なぜなら里長は有権者の状況を知り尽くしているからである。
今年11月26日に統一地方選挙が行われるが、台湾の選挙では普通、市長選と同時に地方議会議員選挙と里長選挙も行われる。日本では、筆者の知っている限り町の住民全てを巻き込んだ町内会長選挙はないようだ。日本の町内会会長は町内会役員相互の自薦他薦や投票によって決める。商店街の頼れるオヤジさんとか経験豊かで世話好きで定年退職したおじいさんが何年もずっと町内会長を務めるというイメージが強い。しかし台湾では住民の投票によって里長を決める。選抜方式は違えど、どんな人が里長に選ばれるかは日本とさほど変わらない、いや、変わらなかった。
今回この里長選挙の立候補者にちょっとした変化がみられる。
≪若葉マーク美女vsベテランおじいさん≫
台湾も日本と同じように最近何年間も給与の増額が抑制されている。就職難に加えて苦労の末やっと決まった仕事でも給与が低く、就職した瞬間から転職の準備を始めたりして、笑うに笑えない状況が続く。加えて2014太陽花学生運動以来、若者が積極的に政治参加するようになった。9月2日に立候補の届け出が締め切られたが、里長選に出馬する若者、特に若い女性が増えた。里長の被選挙権は23歳である。ここ数か月、フェイスブックやブログなどSNSの写真やポスターの写真を見て驚いたのは、里長選に出馬する人の写真がほとんど若くてきれいな女性であるということだ。選挙用に修正しているのかと思ったが、経歴を見ると多くは20歳代前半でそれほど大掛かりな写真修正もサバ読みもしていないようである。彼女たちは新卒後の職業として里長を選んだのだ。里長職は無給とは言え、選挙に当選さえすれば、事務補助費、冠婚葬祭費、文筆活動費、健康診断費、イベント開催費などの名目でかなりの金額を4年間安定してもらい続けることができる。人助けや人のお世話をするのが大好きで人の話が聞くのが好きな人ならうってつけの仕事である。

近所のオヤジさんとか、元気なおじいさんが町民の陳情を聞き問題解決に奮闘努力してくれるというこれまでの町内会が大きく様変わりするかもしれない。里長選挙でどちらに軍配が上がるか予断を許さないが、美女を相手にするおじいさんたちが気の毒に思えてならない(笑)。

