2022-09-06 政治・国際

ロシア第2位の石油会社会長が「自殺」 相次ぐオリガルヒ大物の死が示すもの

注目ポイント

ロシアのオリガルヒ(新興財閥)から、あらたな大物の死が報じられた。今年に入り、少なくとも8人の著名なロシア人経営者らが、自殺か原因不明の事故で死亡したとされ、うち6人は同国の2大エネルギー企業のガスプロムとルクオイルに関係した人物だった。一方、ガスプロムはドイツ経由で欧州に天然ガスを送るパイプライン「ノルトストリーム1」のガス供給を無期限停止することが分かった。冬に向けて、ロシアによる西側への揺さぶりとみられる。

ロイター通信などによると、ロシア第2位の石油会社ルクオイルのラビル・マガノフ会長(67)が1日、入院先の病院で窓から転落して死亡した。事情に詳しい2人の関係者が明らかにした。死亡当時の詳しい状況ははっきりしていない。

ロシア国営タス通信は、当局者の話としてマガノフ氏が自殺したと伝えた。この当局者によると、マガノフ氏は心臓発作で入院し、抗うつ薬も服用していたという。

一方でマガノフ氏と親しかった3人の関係者はロイター通信に、同氏が自殺したとは信じられないと語った。ロイター通信がモスクワ警察に問い合わせたところ、連邦捜査委員会に問い合わせるよう告げられ、連絡したが、同委員会は対応しなかった。

米CNNによると、1月下旬から少なくとも8人の大物ロシア人実業家について、自殺もしくは原因不明の事故で死亡したとの報道が相次いでいる。うち6人は、ロシアの2大エネルギー企業とつながりがあった。また、その6人中4人はガスプロムかその子会社の一つに関係する人物で、残る2人はルクオイル関係者だ。

ルクオイルは今年3月、ロシアによるウクライナでの戦争を批判。公に立場を示す異例の措置を取り、「武装紛争のできる限り早期の終結」を求めて、犠牲者への同情と戦争の終結を呼び掛けた。

同じくルクオイルの元経営トップだったアレクサンデル・スボティン氏も5月に不審死を遂げている。同氏はモスクワ近郊の呪術師の家の地下室で遺体で発見された。タス通信によると、死因は心臓発作だという。また、同氏が呪術師を訪ねたのは、「前日から薬物とアルコールによる急性中毒症に陥ったため」だとしている。

一連のオリガルヒの死亡のうち、最初に報じられたのはガスプロムの関連会社ガスプロム・インベスト社の輸送部門責任者だったレオニード・シュルマン氏。国営RIAノーボスチ通信によると、レニングラード近郊レニンスキーで自身が所有のコテージで1月30日、同氏が刃物でめった刺しされ、血まみれの状態でバスルームの床に倒れているのが発見され、死亡が確認された。RIAによると、現場からは遺書が見つかったため「自殺」とされた。

この後、4月までにガスプロム関連の重役ら3人の不審死が続いたが、いずれも自殺とされた。

相次ぐオリガルヒをめぐる不審死がロシアの闇の深さを浮き彫りにする中、国営ガスプロムは2日、ドイツ経由で欧州に天然ガスを送るパイプライン「ノルトストリーム1」の保守点検で不具合が見つかったとして、その翌日に再開予定だったガス供給の停止を続けると発表した。ノルドストリーム1は保守点検を理由に8月31日から稼働が停止していた。

ガスプロムは再開の時期を明らかにせず、「当該装置の運用の問題が解消されるまで、ノルドストリームパイプラインへの天然ガス供給は完全に停止される」との声明を発表した。ノルドストリーム1は欧州向け天然ガスを運ぶ大動脈で、昨年は欧州のロシア産ガス総輸入量の約35%を占めていた。

ノルドストリーム1の稼働停止延長が発表された2日には、主要7か国(G7)はロシア産石油の取引価格に上限を設ける追加制裁の枠組みを12月に導入することで合意した。ウクライナ侵攻を続けるロシアの戦費調達を阻む狙いだ。

この動きに、サウジアラビアと並ぶ世界最大の石油輸出国ロシアは以前から、価格上限を導入する国に対しては石油輸出を禁止し、報復すると示唆しており、今回の措置は欧州への明らかな対抗措置だ。

こうした石油・天然ガスを〝人質に取った〟プーチン大統領の戦略に異を唱えたオリガルヒが闇に葬られたのか。それとも、西側の経済制裁で資産凍結されたオリガルヒの内部抗争なのか。闇は深まるばかりだが、確かなことは、彼らの死を額面通り「自殺」と受け取るロシア国民がいないことだ。




 

あわせて読みたい