2022-09-02 政治・国際

干上がった湖底から歴史建造物が続々出現 紀元前5千年の「スペインのストーンヘンジ」も

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

気候変動により世界各地で災害が頻発する中、欧州でも深刻な干ばつにより河川や湖などで水位が急激に低下している。スペインでは干上がったダム湖で、紀元前5000年の巨石群や数百年前の教会、古代ローマ時代の要塞跡などが相次いで出現し、干ばつがもたらした想定外の観光ブームが起きている。

スペイン環境省の8月の統計によると、長引く干ばつの後、都市や農場に水を供給するスペインのダム湖の容量は36%を下回っている。そんな中、英紙ガーディアンは、スペイン西部エストレマドゥーラ地方では、バルデカニャス・ダム湖が干上がり、通常は水中に沈んでいた先史時代のストーンサークルが現れたと伝えた。

〝スペインのストーンヘンジ〟と呼ばれる数十個の巨石の輪は、1926年に考古学者によって発見されたが、ダム湖が建設された63年、この遺跡は地域と共に水没した。

今だけしか見ることのできないこの巨石群「ガダルペラルのドルメン」をひと目見ようと、多くの観光客が訪れているという。専門家によると、巨石群は紀元前5000年にさかのぼると考えられている。

巨石群のガイド付きツアーを運営する会社の代表ルベン・アルジェンタさんによると、今や「ガダルペラルのドルメン」は観光客の大人気スポットになっているという。スペイン南部の都市コルドバから来たマヌエル・マンティージャさん(60)は、ニュースでこの場所について知り、「またとない機会だから」と妻と一緒に訪れたと話した。

また、スペイン北東部カタルーニャ州のサン・ローマ・デ・サウ村では、11世紀に建てられた教会の遺跡が干上がったダム湖から出現した。この教会は60年代、ダムが建設された際に水の中に沈んだ。

こちらもメディアの報道やSNSの画像に魅了された大勢の観光客が訪れ、近くのビラノバ・デ・サウ村のレストラン街は、干ばつによってもたらされた観光特需により大繁盛している様子だ。

ガーディアン紙によると、教会の遺跡は崩壊する危険性があるため、人が近づかないよう柵で囲まれていたが、遺跡を囲むように残った素面をカヌーに乗った2人組の観光客が教会のアーチを通り抜けていった。

観光客のセルジ・リエラさんは「通常は(教会の)鐘楼しか見ることができなかった」とし、「何年もの間、見ることのできなかった遺跡の全体を見に来た」と語った。

さらに、同国北西部のガリシア州オウレンセにある「アクイス・クエルクエニス」という古代ローマの遺跡が干ばつにより出現。紀元75年にリマ川沿いに建てられたローマ兵の要塞跡で、最盛期は約600人の兵士が駐屯し、要塞内には兵舎のほか、2か所の穀物倉や病院、寺院、温泉があったとされる。考古学者によると、要塞は2世紀半ばまで使われたという。

この遺跡も近くにダムが建設されたことから、1949年に水没した。ところが、この夏の日照りによりダムの水量が49%まで減少し、古代ローマ遺跡の全体が現れた。ドローンで撮影された遺跡の動画はSNSで注目を集めている。

気候変動による深刻な干ばつで、スペインの一部地域は過去1000年で最も乾燥した状態になったともいわれ、英誌「ネイチャー・ジオサイエンス」で7月に発表された研究によると、冬の降水量はさらに減少する可能性があると指摘している。


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