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6月に中国北部・河北省唐山市の焼き肉店で起きた女性4人に対する集団暴行事件に関与したとして、当局は今週、男28人を逮捕・起訴したと発表した。事件の一部始終は店内や近くの防犯カメラに収められ、その映像が公開されると、たちまち世界中のメディアが取り上げ、中国国内では事件への怒りが爆発。一刻も早い立件に向け、捜査当局への圧力が強まっていた。
事件が起きたのは6月10日。女性グループ3人が店内のテーブルで食事をしていると、屈強そうな男が女性1人の体に触れるなど、性的なちょっかいをかけてきたため、男を押し返したことから集団暴行が始まった。仲間の男たちも加わり、女性2人は髪をつかまれて、店の外に引きずり出され、そこでも殴る蹴るの暴力を受けた。
店の外の歩道にもテーブルが置かれ、そこにも客は居たが、男性客らはただ傍観していた。見かねた被害者グループとは別の女性が助けに入ったが、その女性も暴行された。被害女性4人のうち2人は重傷を負い、3週間入院。別の2人は軽いけがだった。
中国共産党の河北省規律検査委員会は8月29日、事件に関与した男28人を逮捕・起訴したと発表。被告らは2012年から強盗や違法カジノ経営、傷害、拉致監禁などさまざまな凶悪犯罪に関わってきた、いわゆる〝半グレ〟集団だったとされる。だが、焼き肉店での暴力事件をめぐる具体的な罪状は明らかにされていない。
また、別の捜査で同委員会は、警察官ら公務員15人を焼き肉店事件で起訴された被告らが関与したとされる〝闇組織〟から賄賂を受け取った容疑で身柄を拘束したことも発表した。捜査当局は、警察官5人から事件への対応について聞き取り調査を実施し、その中には地方警察のトップも含まれていた。
被害女性の1人は匿名で国営・中国中央電視台の取材に応じ、事件について語った。「私たちは複数の男らに殴られた。殴られた後、警察に通報するな、誰にも助けを求めるな、もしそうしなかったらお前たちを殺すと脅された」と告白した。
同委員会が発表した28人逮捕・起訴のニュースは当日、〝中国版ツイッター〟微博(ウェイボー)で3150万回閲覧され、国民の事件への関心の高さを示した。その証拠に、当局による厳しい検閲にもかかわらず、女性への暴力や、女性への安全に関わる話題がソーシャルメディアで国民の間で熱く語られているという。
例えば、7月には山東省莱陽市で男が妻と娘を待ち伏せし、暴行する様子をとらえた動画もインターネットで一気に拡散。また、男が女性の髪をわしづかみにし、バーのトイレに引きずり込む動画もSNSで大きな話題になった。
さらに、8月上旬には、真っ昼間に恋人の女性を車で何度もひいて殺害した男の犯行の様子を記録した防犯カメラの衝撃映像がSNSで拡散し、国民は怒りを爆発させた。これらの動画は当局により、インターネット上から削除された。