2022-09-05 政治・国際

臓器・人身売買の標的に 台湾中が震撼するカンボジアへの求職詐欺

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

台湾の大卒初任給は約3万元(約13万7000円)。その10倍近い収入を得られる仕事があると誘われてカンボジアに赴いた台湾人が、詐欺行為に加担させられたり、監禁・暴行を受けて人身売買や臓器売買の被害に遭う“海外求職詐欺事件”が台湾中を震撼させている。

カンボジアで何が起こっているのか?

被害がクローズアップされたのは、8月11日、与党・民進党の立法委員(国会議員)らがカンボジアから帰国した被害者女性と記者会見を開き、「現地で監禁されたうえに7日間で4回転売され、支援団体などの助けで脱出できた」という女性の体験談とともに、政府に対応を求めたことに始まる。

それから約1週間後の19日、内政部(内務省)は高収入の広告に釣られてカンボジアへ渡った台湾人が違法な仕事をさせられ、犯罪被害に遭ったなどの通報が全国の警察機関で420件受理されたと発表。中央社は21日、徐国勇内政部長(内相)の話として、依然として370人前後の台湾人被害者がカンボジアに残されていることを報じた。

台湾からカンボジアへの出国者は、今年1月から6月にかけて6400人を超え、前年の7月から12月の約2000人と比べても異常な増え方だ。香港メディアによると、甘い誘いのほとんどはSNSを通じて行われているという。月収20〜30万元(約91〜137万円)、学歴や職歴、語学力は不問、飛行機代も不要で、ビザの申請代行や現地の滞在場所も確保するという好条件でカンボジアや近隣諸国に誘い込み、パスポートを取り上げて監禁。劣悪な環境下でオンライン詐欺や電話詐欺に従事させるほか、暴力や性的暴行を受け、臓器売買や人身売買の“商品”とされるケースもある。

 

なぜ台湾人が騙されるのか?

被害に遭っている台湾人の多くは教育を受けた若者だ。大学進学率が9割を超える台湾、大卒初任給は約3万元(約13万7000円)、全雇用者の月給の中央値は約4万2000元(約19万1000円)だが、所得格差や地域格差は年々広がっている。物価高や低賃金を理由に自分のことを「青貧層」(若年貧困層)と考える若者が一攫千金を夢見て、甘い罠にかかったと報じるメディアも多い。

また、カンボジアでは近年、南部のシアヌークビルを拠点に中国人詐欺グループが中国人を詐欺ビジネスに従事させていることが明るみになり、カンボジアと中国の両政府が協力して詐欺事件や人身売買事件の摘発を続けている。台湾のニュースメディア、三立新聞網はこうした動きの結果、“中国語を話せる人材”が不足し、台湾人が新たなターゲットになっていると指摘する。

 

問題解決への道筋は?

台湾政府はカンボジアに大使館に相当する窓口機関を持たないため、対策の難易度が上がっているという声もあるが、政府はすでに専門チームを立ち上げ、現地で監禁、拘束されている台湾人の救出や帰国を最優先任務とし、被害者の実態把握にも力を注ぐとしている。

外交部ホームページよりキャプチャー

カンボジアの警察・司法当局との連携強化のほか、関連が疑われる人材募集のインターネット広告の削除や、空港や駅における注意喚起の看板を掲出するなどの防止策が進められ、台湾外交部(外務省)はホームページで「海外求職陷阱宣導專區」(海外求職詐欺に関する専用ページ)を設け、外交部や関係政府機関の資料や過去の事例、相談・問い合わせ窓口などを公開している。

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