注目ポイント
中国では猛暑がもたらした歴史的な干ばつにより、4億5000万人の生活を支える長江の流域各地で干上がった川底や湖底があらわになり、農作物への甚大な被害が懸念される中、同国の西に接するパキスタンでは、大規模な洪水で国土の3分の1が水没。未曽有の災害となっている。
今年のモンスーン期の豪雨がもたらしたパキスタンの洪水被害は、これまで経験したことのないレベルで、同国のレフマン気候変動相は、国土の3分の1が水没したと指摘。6月から続いた豪雨により、死者は30日までで1100人を超え、全人口の約15%にあたる3300万人が被災したと述べた。同氏はまた、「(国土に)大きな海ができた」と表現し、その規模の異常さを示した。
AFP通信によると、パキスタンの国土面積は日本の約2倍の約79万6000平方キロで、被災面積は日本の本州の面積(約22万8000平方キロ)を上回っているもようで、被災者の救助や生活支援も難航しているという。
絶え間ない雨が3か月近く続き、農地の多くはすでに水没。パキスタンで最も破壊的なモンスーン期となり、食糧不足の不安が高まっている。
深刻な被害を受けた山岳地帯カイバル・パクトゥンクワ州のファイサル・アミン・カーン大臣は、米紙ニューヨーク・タイムズに「被害が最も深刻な地域に救援物資を届けるために、ボートやラクダなどあらゆる手段を使用している」とした上で、「最善を尽くしているが、私たちの州は2010年の大洪水の時以上の大きな打撃を受けている」と語った。10年の水害は「パキスタン洪水」と呼ばれ、同年7月から国土の5分の1が水没。当時はパキスタン史上最悪の洪水災害となった。
パキスタン南東部シンダ州のある町では、1日の降水量が1700ミリを記録。レフマン氏は「前代未聞」とツイートした。例えば、東京の年間平均降水量は1530ミリとされ、わずか1日でそれ以上の雨が降ったことになる。
気象専門家によると、世界各地で異常気象が増えているのは、地球の気温が上昇しているためだと説明。気温が高いほど空気中の水分が増え、気温が1度上がるごとに空気中の水分は約4%増加するという。
そのため、洪水被害は今年だけでも世界各地で報告されている。
米紙ワシントン・ポストによると、米国では先週、テキサス州ダラス・フォートワース地域を記録的な鉄砲水が襲い、ケンタッキー州東部では先月、洪水で数十人が死亡し、ミズーリ州セントルイスでは記録的大洪水に見舞われた。
オーストラリアのある州では先月、710ミリの降雨量が観測され、韓国では今月、首都ソウルの一部地域が記録的豪雨に見舞われた。また、昨年は欧州各地で大規模な洪水が発生し、150人以上が死亡したのも記憶に新しい。
ロイター通信によると、パキスタンのイクバル計画開発改革相は、現時点での被害総額を100億ドル(約1兆3900億円)以上と推定。「100万戸近い住宅が被災した」とし、復興には5年かかるという見通しを示した。