2022-08-30 政治・国際

50年前のアポロ以来、NASA「再び月へ」 アルテミス計画第1段の29日打ち上げは中止

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注目ポイント

NASA(米航空宇宙局)による1960~70年代の「アポロ計画」以来となる月面着陸を目指す米国主導の「アルテミス計画」が、ついに始まった。その第1弾として、無人宇宙船「オリオン」を搭載した大型ロケットの打ち上げが29日午前(日本時間同日午後)、米フロリダ州のケネディ宇宙センターで予定されていたが、エンジントラブルで急きょ中止された。条件が満たされれば、早ければ現地9月2日に打ち上げられる。

NASAの超大型打ち上げロケット「スペース・ローンチ・システム」(SLS)と、宇宙船「オリオン」で構成された高さ98メートルのスタックは、同宇宙センターの発射台「39B」に配置されている。この発射台はアポロ10号とスペースシャトルが打ち上げられた歴史的なものだ。

当初は、米東部時間29日午前8時33分(日本時間同日午後9時33分)から2時間の枠内で打ち上げられる予定だったが、NASAによると、コアステージ(第1段)に4基搭載されているロケットエンジン「RS-25」のうち1基で始動前の温度を低温に保てない状態が発生。技術者が解決を試みたものの、2時間内には間に合わないことから、日本時間午後9時34分に同日の打ち上げ中止が発表された。

そのため、新たな打ち上げ予定は現地時間9月2日午後零時48分(日本時間同3日午前零時48分)からの2時間に設定された。

オリオンは地球と月の往復と、月の周回など、計210万キロを飛行し、さまざまなデータを収集した後、地球に帰還する。ミッション期間は4~6週間。9月上旬に打ち上げが成功すれば、10月中にサンディエゴ沖の太平洋に着水する。

NASAによると、計画第1段「アルテミスI」は無人だが、オリオンのコックピットにはマネキン3体とスヌーピーのぬいぐるみが〝搭乗〟している。実は、それぞれに目的があり、スヌーピーは無重力インジケーターとして機能。カプセルが宇宙環境に到達すると、スヌーピーはカプセル内で浮遊し始める。

マネキンはそれぞれ、「ムーンキン・カンポス司令官」と「ヘルガ」「ゾハール」と名付けられ、実際の搭乗員が経験する深宇宙の放射線量を測定し、新しい宇宙服と遮蔽(しゃへい)技術をテストし、有人飛行での健康リスクを調べる。また、種子、藻類、菌類、酵母を運ぶ生物学実験は、生命がこの放射線にどのように反応するか実験するために積まれている。

アルテミス計画は、日本も参加する月面有人探査の国際協力プロジェクト。日本からは月面着陸を目指す超小型探査機「OMOTENASHI」と、月の近くを探査し宇宙領域の放射線環境について調査する「エクレウス」が含まれている。

「アルテミスI」では、オリオンを月のまわりを周回させた後、地球に帰還させることでヒートシールド(熱遮断)技術を検証。24年と25年に予定されているアルテミスIIとアルテミスIIIは有人飛行となる。

NASAの計画によると、アルテミスIIでは月面には着陸せず、10日間ほどで地球に帰還する。アルテミスIIIで、1972年のアポロ17号以来初めてとなる月面着陸に挑む。その先の30年代には火星の有人着陸も見据えており、月の周回軌道に宇宙ステーション「ゲートウェイ」を建設する計画は、火星に行くための技術を月で開発することを目指すという。ゲートウェイの建設には日本の宇宙ステーション補給機「HTV‐X」が物資の輸送を担う。

そんな中、月面探査で「米国に追いつけ、追い越せ」とばかり、宇宙開発技術を飛躍的に進歩させているのが中国だ。同国の国家航天局(CNSA)は20年12月、無人探査機「嫦娥(じょうが)5号」が月面の岩石や土壌の採取に成功。離陸前には、米国に次ぐ2か国目として月面で国旗を掲げた。中国の探査機が月面に降りるのは13年の「嫦娥3号」と19年の「嫦娥4号」に続き3回目。

ちなみに、中国初の月面探査ミッションは07年10月、四川省の西昌衛星発射センターから打ち上げられた「嫦娥1号」。その際、月を周回して探査を行い、中国初となる全月球画像の撮影に成功している。

一方、米国は69年、アポロ11号で世界初の月面着陸に成功。アームストロング船長とオルドリン操縦士の2人がアポロ月面着陸船「イーグル」から降り、人類で初めて月面を歩いて探索した。72年まで6度の着陸で計12人の宇宙飛行士が月面を歩いた。その名となった太陽神「アポロ」の双子の妹、月の女神「アルテミス」が新たな夢を引き継ぐ。



 

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