2022-08-29 政治・国際

中国で歴史的干ばつ 工場休止相次ぎ 長江流域4億5000万人の生活に影響

© Photo Credit: Reuters /達志影像 Poyang Lake

注目ポイント

中国が歴史的猛暑による干ばつに見舞われている。4億5000万人余りの生活を支える長江の流域では、猛暑と水不足で農産物に甚大な被害が出た。また、四川省などでは水力発電用のダムが干上がり、多くの都市で計画停電や電気使用制限がかけられている。そのため、台湾や日本の企業も生産削減や操業停止に追いやられるなど、工業生産まで大きな打撃を受けている。

長江流域の農業生産は中国全土の3分の1を占めるが、今夏は70日以上にわたる記録的な高温と雨不足に襲われた。ここにきてようやく数日中に降雨が予想されるものの、中部にある江西省の鄱陽湖(はようこ)近隣に住む農家は、熱波の打撃から立ち直るのはもはや難しいのではないかと不安をあらわにしている。

長江とつながる中国最大の淡水湖である鄱陽湖は約7割が干上がり、長江の一部や支流でも水のない場所が目立っているという。江西省当局によると、歴史的干ばつで約400万人の生活用水にも影響が出ているという。

鄱陽湖中央部の小さな島に建つ寺院は、通常なら水に浮かび、その姿から「中国のモン・サン・ミッシェル」として人気の観光スポットだったが、湖底にある寺院の基礎部分も完全に干上がり、小山のようになっている。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、水力発電ダムからの電力不足により、政府は石炭による火力発電の稼働を急ピッチで増やしている。また、多くの都市では計画停電やエネルギー使用の制限を余儀なくされ、四川省の省都・成都では1日10時間以上停電する地域もあるという。

同市では、電気自動車を充電するため、限定された時間しか稼働していない充電ステーションに一晩中長蛇の列ができ、順番がくるまで夜通し並ぶ必要があるという。ある運転手は、「行列はとても長く、地下駐車場から外の道路まで伸びていた」と話した。

そのため、四川省では人工降雨の取り組みに着手。国営中央テレビによると、同省北部と南東部で25日午前に大型2機が飛行を開始。29日まで最終的に6000平方キロメートルを対象にヨウ化銀などを雨雲に散布し、人工的に降水量を増やす作業を続ける。だが、劇的に状況が改善することは考え難く、多くの専門家は「焼け石に水」とみている。

また、四川省と人口2000万人の大都市・重慶は、工場や一般向け電力供給を抑制するため、計画停電を実施。干ばつで水力発電の能力が大きく低下する一方、猛暑でエアコンなどの電力需要は増えていた。

熱波は2か月以上にわたって中国を焦がし、四川省から同国東岸まで広がり、気温が40度を超える日が何日も続いた。重慶など8か所では先週、気温が45度まで上昇。これは、新疆ウイグル自治区など、砂漠地帯以外の中国の都市で記録された最高気温となった。

灼熱の酷暑は重慶郊外で森林火災を引き起こし、何千人もの消防士やボランティアが消火活動に加わった。

ニューヨーク・タイムズ紙は、干ばつにより、数十の河川や貯水池が枯渇したため、四川省の水力発電能力が半減し、工業生産が打撃を受けていると伝えた。フォルクスワーゲンは従業員6000人を抱える成都工場を1週間半閉鎖し、トヨタは組立工場の操業を一時的に停止した。

重慶では、いすゞ自動車、デンソー、パナソニック、ヤマハ発動機などの日本企業の工場を全面停止、あるいは一部停止してきた。また、台湾の大手電子機器メーカー、フォックスコンと、世界最大の電気自動車バッテリーメーカー、寧徳時代新能源科技(CATL) は、近くの工場での時短操業により、生産を削減したという。

ロイター通信によると、農業省は先週、農家に対してコメを収穫・貯蔵するとともに、今後数週間は、穀物の生育強化のために対策をとるよう呼びかける緊急の通達を出した。既に干ばつで大きな被害を受けている地域では、サツマイモなどの晩秋の作物に切り替えるよう勧めているが、容易ではない。

江西省の省都・南昌郊外の村で農業を営むフー・バオリンさん(70)はロイター通信に、「土地がないから他の作物への切り替えはできない」と話す。種子やゴマなどの生育状況は平年に比べて極端に悪く、ザボンのサイズは通常のわずか3分1だ。

ロイター通信は、近くの井戸は枯れて果て、池はすでに完全に干上がり、その周囲をガチョウの群れが所在なげにうろつくばかりだと伝えた。


 


 

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