注目ポイント
中国が歴史的猛暑による干ばつに見舞われている。4億5000万人余りの生活を支える長江の流域では、猛暑と水不足で農産物に甚大な被害が出た。また、四川省などでは水力発電用のダムが干上がり、多くの都市で計画停電や電気使用制限がかけられている。そのため、台湾や日本の企業も生産削減や操業停止に追いやられるなど、工業生産まで大きな打撃を受けている。
長江流域の農業生産は中国全土の3分の1を占めるが、今夏は70日以上にわたる記録的な高温と雨不足に襲われた。ここにきてようやく数日中に降雨が予想されるものの、中部にある江西省の鄱陽湖(はようこ)近隣に住む農家は、熱波の打撃から立ち直るのはもはや難しいのではないかと不安をあらわにしている。
長江とつながる中国最大の淡水湖である鄱陽湖は約7割が干上がり、長江の一部や支流でも水のない場所が目立っているという。江西省当局によると、歴史的干ばつで約400万人の生活用水にも影響が出ているという。
鄱陽湖中央部の小さな島に建つ寺院は、通常なら水に浮かび、その姿から「中国のモン・サン・ミッシェル」として人気の観光スポットだったが、湖底にある寺院の基礎部分も完全に干上がり、小山のようになっている。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、水力発電ダムからの電力不足により、政府は石炭による火力発電の稼働を急ピッチで増やしている。また、多くの都市では計画停電やエネルギー使用の制限を余儀なくされ、四川省の省都・成都では1日10時間以上停電する地域もあるという。
同市では、電気自動車を充電するため、限定された時間しか稼働していない充電ステーションに一晩中長蛇の列ができ、順番がくるまで夜通し並ぶ必要があるという。ある運転手は、「行列はとても長く、地下駐車場から外の道路まで伸びていた」と話した。
そのため、四川省では人工降雨の取り組みに着手。国営中央テレビによると、同省北部と南東部で25日午前に大型2機が飛行を開始。29日まで最終的に6000平方キロメートルを対象にヨウ化銀などを雨雲に散布し、人工的に降水量を増やす作業を続ける。だが、劇的に状況が改善することは考え難く、多くの専門家は「焼け石に水」とみている。
また、四川省と人口2000万人の大都市・重慶は、工場や一般向け電力供給を抑制するため、計画停電を実施。干ばつで水力発電の能力が大きく低下する一方、猛暑でエアコンなどの電力需要は増えていた。
熱波は2か月以上にわたって中国を焦がし、四川省から同国東岸まで広がり、気温が40度を超える日が何日も続いた。重慶など8か所では先週、気温が45度まで上昇。これは、新疆ウイグル自治区など、砂漠地帯以外の中国の都市で記録された最高気温となった。
灼熱の酷暑は重慶郊外で森林火災を引き起こし、何千人もの消防士やボランティアが消火活動に加わった。