注目ポイント
安倍晋三元首相が凶弾に倒れた事件は台湾にも大きな衝撃を与えました。日本国内では「国葬」や「旧統一教会問題」をめぐってさまざまな議論が起きていますが、歴代最長の宰相として東アジアや台湾に大きな影響を与えてきた安倍氏なきあとの安全保障・経済問題をどう考えるべきか——山本一郎さんの月イチ連載です。
日本人は本当の意味での戦争の終わりに直面することになる
先般、台湾の友人たちから安倍晋三さんの訃報を受けて、深い悲しみとともに7割もの台湾人が安倍さんに追悼の考えがあることが報じられていました。
台湾に所縁の深いコラムニスト米果さんの記事では「日本台湾交流協会が設置したメッセージボードは、あっという間に追悼の言葉で埋め尽くされた」エピソードとともに、安倍さんがなぜ台湾の皆さんに支持されてきたのかを記しておられます。必読であります。
安倍氏死去「悲しい」、台湾で7割超 対日関係の行方には楽観の世論|朝日新聞デジタル
台湾人が故・安倍晋三氏に感謝する理由| nippon.com
日本では、政治家・安倍晋三の軌跡が描く功績とともに、宗教団体を隠れ蓑に霊感商法などの消費者問題をかねて引き起こし、日本政治裏面史として米ソ対立下の対共産勢力の前面に立った統一教会の問題について連日報じられています。現役閣僚を含む大物政治家の関わりについて告発が相次いでいて、大騒ぎになっていたんですよね。困ったものだなあ。
日本の中でも右派からの支持が強く、政策面では政治リスクを追ってなお安保法案を成立させ、不安定なトランプ政権の国際的な調整・窓口役までこなした安倍さんが、韓国発祥で多くの日本人の家庭を壊してきた統一教会と実はかなりベッタリやってきていたことが明るみに出ると、いままで安倍さんを支持してきた人を中心に認知的不協和を引き起こし混乱に陥っているさまが見て取れます。不運な暗殺から50日以上が経過してなお、日本社会に衝撃が残っているのもまた、安倍晋三さんの存在の大きさと、一筋縄ではいかない政治の複雑さ、奥の深さに国民が触れて、戸惑ってさえいるのではないかとも感じます。
裏を返すと、そのような問題のある宗教団体が歴史的経緯の中で自民党の保守傍流である岸信介さんと結託し、その後、子の安倍晋太郎さんや清和会直系でもある三塚博さん、さらには警察官僚から政治家に転身した亀井静香さんといった自民党の要職を担った人々の庇護のもと、岸信介さんの孫にあたる安倍晋三さんにまで系譜がつながり、それこそ終戦直後から現代にいたる政治課題として残り続けたのは異様としか言いようがありません。
言うなれば完全な日本政界全体を覆うスパイ事案そのものであって、それが宗教団体を標榜していたにせよ、韓国や北朝鮮の意を汲む組織が日本政治・自民党に深く食い込み、政策に影響を与え、日本政府中枢の判断・決断を下すに際して大なり小なり圧力がかかっていたことは間違いありません。その代弁人が安倍晋三さんその人であった面は紛れもない事実であって、おそらくは、日本人はこれから時間をかけて本当の意味での戦争の終わりに直面することになるのかもしれません。