2022-08-27 ライフ

DESIGNED by TAIWAN| #001|書体デザイナー 曾國榕

注目ポイント

日本留学中に書体デザインの研究を始め、台湾に帰国後は書体デザイン会社のjustfontでデザインや指導を担当するデザイナーの曾國榕さんへのインタビュー。書体デザインに目覚めたきっかけ、日台の書体デザイン市場の違いや可能性を聞いた。

私が以前に寄稿した「書体デザインの新たな夜明け!「justfont」が台湾に巻き起こしたムーブメント」で、紹介した書体デザイン会社「justfont」の曾國榕さん(以下:ロンさん)に、インタビューをしました。

ロンさんは、国立台中教育大学で美術学の課程を修了した後、さらにデザインを学ぶために日本へ留学されました。留学中に書体デザインとの出会いがあり、ご自身で積極的にその研究をされました。台湾に戻ってからはjustfontで書体のデザインや、一般の方々に書体制作の指導を担当。また語学力を活かして日本の専門書の翻訳をするなど、台湾のデザイン業界で幅広く活躍されています。

 

Q|どうして留学先を日本に選んだのですか?

実は、学生のころからヨーロッパやアメリカのデザインよりも、日本のパッケージやポスターなどのグラフィックデザインの方が好きでした。それが日本に留学した主な理由です。

最初は日本に来ても、なぜ日本のデザインに魅力を感じるのか分かりませんでした。ですが、書体を手書きするレタリングの授業などを通じて、日本人が作った書体の完成度が高く美しいことが、1つの理由だという答えに辿り着きました。

Q|それがきっかけで書体のデザインに注目されたのですね。

そうです。日本の京都に留学中、書体デザインの授業で出された宿題に、本当に夢中になっていました。「夢中」の字の通り、起きている時だけじゃなくて、夢の中でも宿題していたくらいです(笑)。

それに当時の台湾には書体に関する情報が少なかったのですが、日本には沢山あったんですよね。だから書体に関する本をいろいろ読みましたし、レタリングの練習を重ねて日本のレタリング検定3級を取得したりして、書体の知識と技術を深めていきました。

ロンさんがレタリングされたデザイン案

Q|では、台湾に戻られてからどうして書体デザインの教育を担当することになったのでしょうか?

justfont共同創設者の1人でCEOのMichael(葉俊麟)が書体デザインを教える場を作りたいと考えていたんです。偶然にもそのタイミングに、教育大学を卒業して日本で書体デザインを少し学んだ僕と出会いました。

実は、Monotype社(米国の世界最大級の書体会社)と、個人的な繋がりがあったのですが、イベントや展示会の企画など自由にいろんな新しいアイデアに挑戦できる若い会社の方が、伝統ある会社よりも絶対楽しい!そう思ってjustfontに入社を決めました。

それに書体デザインの指導だけでなく、ブログの執筆や書籍の翻訳をしているのも単純にできるだけ多くの人に、書体デザインの専門知識を教えたいと思っているからです。

今までに、ライセンス契約をしていないままコピー版を利用したデザインを発見したことがありました。justfontは教育を重要なキーワードにしていますので、先ず柯志杰さんが運営しているfacebook上のコミュニティー「字嗨」上で、こういった問題を共有し、みんなに考えてもらい意見を交わしてもらいます。その上で違反をしたデザイン会社やデザイナーに対して、法的処置や損害賠償を求めるのではなく、弊社が発行する書体に関する書籍を購入してもらい、大学など教育機関や図書館に寄付してもらうということをしています。

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