2022-08-26 政治・国際

モスクワ車爆破事件で衝撃の黒幕説が浮上 西側専門家が名指しするテロの実行犯とは

© Photo Credit: AP / 達志影像

注目ポイント

ロシアのプーチン大統領の盟友とされるアレクサンドル・ドゥーギン氏(60)の娘ダリアさん(29)の車爆破殺害事件を巡り、ロシア国内のパルチザンによる仕業や、ウクライナ人女性による犯行説、プーチン氏が殺害を直接指示したとする陰謀論まで浮上。そんな中、西側の専門家は、ドゥーギン親子を狙った黒幕がロシア連邦保安庁(FSB)だと名指しした。

ダリアさんは20日夜、モスクワ郊外を運転中、仕掛けられた爆弾により、車が爆破・炎上して死亡した。その直後からロシアはウクライナを非難し、ウクライナは言いがかりだとして、関与を完全否定。ウクライナ在住で、ロシアから亡命した元下院議員イリヤ・ポノマレフ氏は、ロシア国内で活動する反プーチンのパルチザンによるものだと主張した。

そんな中、ロシア連邦保安庁(FSB)は短時間の調査後、ウクライナ人女性がダリアさん殺害に関与し、犯行翌日にはエストニアに逃亡したと発表した。ウクライナ側は否定している。FSBの前身はソ連時代のKGBで、プーチン氏や政権中枢のシロヴィキと呼ばれる治安と軍事のエリートたちの多くの出身母体だ。

一方、現在はウクライナの首都キーウでニュースメディアを立ち上げたポノマレフ氏は、ロシア国内で活動するパルチザンによる地下組織「国民共和国軍」(NRA)がドゥーギン親子を標的にし、結果的に娘を殺害したと説明。NRAの目標は「プーチンを打倒」し「破壊する」ことだと主張した。

これらの説を裏付ける具体的な証拠はまだ表面化していないが、中には、ダリアさん殺害はプーチン氏自身によって企てられた可能性があると推測する向きもある。英国のトム・トゥーゲントハット議員は、ドゥーギン氏がプーチン政権を批判するようになったことから、プーチン氏自身が同氏を〝消す〟よう指示した可能性を示唆した。

もし、本当にそのような指示があったとすれば、FSBが関与したのか。米誌「ニューズウィーク」は専門家の見解を伝えた。

ロシアと東欧州に詳しいドイツの政治専門家セルゲイ・サムレニー氏はまず、ロシア政府が主張するウクライナ人女性による犯行説は「完全なフェイク」だと切り捨てた。7月に娘と一緒にロシアに到着し、ドゥーギン氏が住む同じマンションに部屋を借りたウクライナ人女性による犯行だとする主張だ。

FSBは証拠として、その女性のパスポート写真や、ロシアで彼女を撮ったとされる映像を公開したが、デジタルデータの専門家たちは、すぐに公開された証拠がフォトショップで作成されたフェイクだとツイートした。

サムレニー氏は、「証拠とされるものは明らかに作り物だと判明している。例えば、ダリアを殺害したと彼らが主張する女性の身分証明書は、フォトショップで加工されている」とし、FSBの「いつもの標準的な偽情報キャンペーンの一環」だと一蹴した。

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