2022-08-25 政治・国際

半年で30か国歴訪〝中国の顔〟王毅外相 習主席の野望携え、反米宣伝を外遊で発信

© Photo Credit: Reuters /達志影像

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コロナ禍以降、国外に出ることを恐れているかのように外遊を避け続ける中国の習近平国家主席に代わり、今や〝中国の顔〟として、過酷なほどの海外歴訪日程をこなす王毅外相(68)。流暢な日本語をあやつり、2004年から3年間、駐日大使を務めた。13年に外相に任命されて以来、中国の閣僚としては異例の長さで同職に就いている。その狙いを米紙ニューヨーク・タイムズが解説した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、「中国の王毅外相は、よくプレスされたスーツを着た粋な男で、今年だけですでに30以上の大小の国々を絶え間なく訪問。太平洋の島嶼国(とうしょこく)、中国の西側周辺の中央アジア、そして、しばしばアフリカへも脚を延ばした」と同氏を紹介。王氏は中国が西側、特に米国に屈服しないというメッセージを携え、習近平国家主席の覇権的野望のため、世界中で広報活動を繰り広げているとした。

王氏は先月、インドネシアで米国のブリンケン国務長官と会談。「米国は深刻な嫌中を正すこと」を含む、4つの「是正すべき不当な行為」のリストを提示した。要求が無視された場合、関係は行き詰まるだろうと、中国共産党系の英字紙グローバル・タイムズは警告する。

変化する世界秩序の中で、中国はその立ち位置を確立した。パンデミックが始まって以来、習氏が国外に出ていないことから、王氏は〝中国の顔〟となった。中国は米国とその同盟国に対抗し、発展途上国を受け入れ、権威主義的な枢軸として世界的リーダーになるとする習氏のビジョンを王氏は称賛してきた。

その一方、ロシアのウクライナ侵攻以来、王氏は欧州を避けてきた。中国はロシアに友好的であるとみなされ、中国に対する西側の評価が急落したからだ。同氏は台湾への強硬派の旗手でもある。また、イスラム教の国々には中国と連携させるよう働きかけている。その理由は、イスラム少数派であるウイグル族の大量拘束に対する西側諸国の批判をかわす防波堤として確保することでもある。

バイデン政権発足以来、王氏は一度だけ米国を訪れている。昨年3月、アラスカ州アンカレジでブリンケン氏ら米外交トップとの会談に出席し、煮え湯を飲まされたのだ。米国政府は会談の24時間前、新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に、中国政府高官ら4人を制裁対象としたことに、王氏はブリンケン氏とジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を非難。「これは客を歓迎する態度ではない」と会談の冒頭でそう述べた。

そんな中、王氏はアジアのために戦いを仕掛けているとニューヨーク・タイムズ紙は分析する。

「中国が主張するのは『アジアの問題はアジア人が解決すべき』ということ」

だと、王氏との非公開の外交会議に出席したことのあるシンガポールのビラハリ・カウシカン元外相はそう述べた。「中国はまた、米国は頼りにならないトラブルメーカーであるとも言っている」と続けた。

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