注目ポイント
日本のパスポートを持っていれば世界190か国にビザなしで渡航できるほど最強のパスポートなのに所有率は20%以下である。台湾人のパスポート所有率は60%以上で、休みの度に海外旅行に出かけてきた。いったい日本人の海外旅行熱はどうなってしまったのか。
≪日本人のパスポート所有率はG7最低≫
勝海舟も福沢諭吉も海外を直に見分して新しい日本を創った。古くは日本の僧侶たちは唐に留学して日本文化の礎を築いた。今、日本人の多くはパスポートを持っていない。坂本龍馬は自由に海外に行ってみたくて幕府を倒したというのに。
外務省の2017年統計によると、日本人のパスポート所有率は23.5%で先進7か国(G7)の中で最低であった。その後コロナ禍の鎖国で海外に行く人が激減したため、旅券所有率はついに20%を切って19.1%にまで下落した。つまり日本人は5人に一人もパスポートを持っていないことになる。ちなみに英国は約76%、米国42%、カナダ66%、台湾60.87%となっている。
≪言葉? 安全? 魅力?≫
筆者が子供のころ、父はよく広島県内や近隣県に旅行に連れて行ってくれた。旅行が嫌いなわけではなさそうだ。しかし海外となると、「飛行機代、高いし、わしゃ英語わからんけん、行きとおないわい。海外の観光名所ならテレビで見れるしのー。」と言って結局重い腰を上げることはなかった。母は一度だけ台湾に遊びに来たことがあるが、怖いと言って夜は外に出なかった。だから夜市には行っていない。別にうちの両親の例ですべてを語るつもりなどさらさらないが、このように8割以上の日本人が海外旅行に積極的ではない。旅券を持っていない主な理由は、言葉、費用、魅力、治安の四つであろうと思われる。日本人の英語力に関しては今更言うまでもないことだが、TOEFLの国別平均点ではアジア29か国中日本は26位でほとんど最下位レベルである。費用に関してはLCCが普及してきたとはいえ、海外旅行はいまだに高嶺の花と思っている人が多く、加えていつ終わるかわからない円安も、旅券申請数減少に拍車をかけている。治安に関しては内外問わず多くの人が日本の治安はいいと感じており、実際日本の治安は163か国中9位でかなりいいほうである。
最後に旅の魅力に関して言えば、日本には、車や列車、船などでちょっと足を延ばせば風光明媚な所が山ほどあるし、ほとんどの観光地にはおいしいものがある。車窓の風景は日々変化し、海外でたまに経験するように、何十時間も草原だけとか畑ばっかりなどといったことはなく、四季折々の変化に富んでいる。国内旅行のほうがあらゆる「コスパ」がいいのである。
≪親日国台湾は海外旅行が大好き≫
台湾人にとっても国内旅行より日本旅行の方がコスパがいい(ただし台湾人にとって日本は海外であることをお忘れなく)。懸命に働いても不動産や車を買ったりするのが非常に困難な若者は、「小確幸」、つまり文字通り小さくてささやかだけれど確かな幸せを求める傾向がある。この2~3年はコロナ禍で我慢しているだけであるが、毎年多くの台湾人が休みの度に日本を訪れる。年に何回も日本へ行く人も多い。中には日本に行くことを「日本に帰る」という人もいる。また世界各地に「華僑」がいて、海外の親戚を訪ねるチャンスが多いのも中華民族の特長である。台湾人のパスポート所有率が高いのも頷ける。