2022-08-19 政治・国際

1936年に絶滅した有袋類オオカミ復活へ 米豪研究者が最先端技術で10年をめどに

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注目ポイント

まるで「ジュラシック・パーク」だ―。1936年に最後の1頭が死んで絶滅したとされる大型肉食獣フクロオオカミを復活させるプロジェクトを、米国とオーストラリアの研究者らが立ち上げた。豪タスマニア島に生息していたフクロオオカミは、別名タスマニアタイガーとも呼ばれ、有袋類でありながらオオカミというユニークな動物として知られていた。

フクロオオカミは収斂(しゅうれん)進化の代表例としてしばしば取り上げられる絶滅種だ。収斂進化とは、全く異なる系統の生物が、環境要因などで同様の選択圧にさらされ、似たような体形をもつようになるような現象。フクロオオカミはイヌのような体形で、メスはカンガルーなどのように下腹部に育児嚢 (いくじのう)を持ち、背中から尾にかけてトラのような特徴的なストライプ状の模様があった。

そんな絶滅種を復活させるという野心的なプロジェクトを可能にするのが、遺伝子工学の進歩や古代DNA回収法、人工繁殖技術だ。

メルボルン大学のアンドリュー・パスク教授は、「生物多様性をさらなる絶滅から保護する必要性を強く望むが、残念ながら、種の損失の減速は見られない」とした上で、「このような技術は貴重な種が失われた場合に限り、例外的な状況で適用できる可能性がある」と主張した。

このプロジェクトは、米コロッサル・バイオサイエンス社と同社の共同創設者ベン・ラム氏とハーバード大学医学部の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏により発足。コロッサル社は現在、アジアゾウのDNAを組み合わせて、マンモスを遺伝的に復活させるという1500万ドル(約20億円)のプロジェクトに取り組んでいる。

フクロオオカミはコヨーテと同等の大きさで、約2000年前にタスマニア島を除いて地球上から姿を消した。近代で唯一の有袋類の捕食者として頂点だったフクロオオカミは生態系の中で重要な役割を果たしたが、人間からは嫌われる動物だった。

1800年代に欧州から移住してきた人たちは、「家畜を襲うフクロオオカミは害獣」として駆除し、絶滅に追いやった。だが実際、家畜を襲っていたのはディンゴと呼ばれるオーストラリア大陸とその周辺に生息するタイリクオオカミの亜種で、家畜の管理方法にも問題があったことが分かってきている。フクロオオカミは警戒心が強く、臆病で、半夜行性だったとされる。

記録に残る最後のフクロオオカミは、「ベンジャミン」と名付けられた捕獲されたオスの個体で、タスマニア島ホバートにあったビューマリス動物園で飼育・展示されていたが、1936年に死んだ。その直前、フクロオオカミは保護動物に指定されたが、種を保存するには手遅れだった。ちなみに、同動物園もその翌年には閉園となった。

フクロオオカミ再生プロジェクトは、遺伝子編集や人工子宮の製造など、最新鋭の科学技術を駆使する複雑なプロセスを要する。

まず、フクロオオカミのゲノムを構築し、ネズミのような形態のオブトスミントプシスという肉食の有袋類の動物のものと比較し、その違いを検証する作業だ。オブトスミントプシスは現在も生息する動物で、フクロオオカミに「最も近い親戚」だという。

メルボルン大のパスク教授は、「次に、オブトスミントプシスから生きた細胞を取り出し、フクロオオカミと異なる全てのDNAを編集する」と説明。つまり、オブトスミントプシスの細胞をフクロオオカミの細胞になるよう操作するというのだ。細胞操作に成功した後、生殖技術を駆使し、代理母のオブトスミントプシスにその細胞を戻すとしている。

ネズミのようなオブトスミントプシスと、コヨーテほどのフクロオオカミとではサイズ的に大きな違いがある。ところがパスク氏は、全ての有袋類は生まれて間もない時の大きさが非常に小さく、米粒ほどのものもあるとし、オブトスミントプシスでも誕生から一定の期間は十分に代理母になり得ると説明した。

パスク氏は、「現段階では最初のフクロオオカミのベビーが誕生するまでには10年ほどかかると思う」と説明。「この技術で、このような種を野生に返し、生態系に絶対的に必要な役割を果たしてもらうことが最終的な目的。いつの日かタスマニアの地で、再び低草原地帯で生活するフクロオオカミの姿を見ることが究極の願い」と語った。

 

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