注目ポイント
小学生たちがプロの映画監督の指導のもと制作した映画「元町物語 byアメリカ山キッズ映画制作チーム」が8月末にYouTubeで公開される。横浜元町の学童保育施設が「情育」の一環として実施した映画作りの舞台裏を取材した。
映画文化に触れ、豊かな心や感情を育むために

「どら焼きはどうやってつくっているんですか?」――和菓子屋の店員の隣で、小学生リポーターが質問を投げかける。8月初旬、横浜市の元町ショッピングストリートで行われた映画の撮影風景だ。
小学生たちが映画制作を体験する「元町物語 byアメリカ山キッズ映画制作チーム」は、みなとみらい線の元町・中華街駅に直結した学童保育施設、アメリカ山ガーデンアカデミーの主催で実施された。コロナ禍によって内にこもる時間が増え、感情を抑えがちな子どもたちに、商店街で働く人々を取材・撮影し、映画にまとめるというクリエイティブな体験をしてもらうことで、豊かな心や感情を育むとともに、大人たちと交流し、街の歴史や地域を支える商店街の役割を理解するきっかけになることを目指した取り組みだ。
同アカデミーの松村勲理事長によると、施設では日常と異なる世界を子どもたちが体験し、子ども自身が本来持っている能力を開花させる「はぐくみプロジェクト」を定期的に展開しているという。
「食育」「服育」「情育」「心体育」という四つのテーマで企画・実施され、今回の映画制作は情育の一環。SDGsで掲げられている17の目標のうち、4番目の「質の高い教育をみんなに」、8番目の「働きがいも経済成長も」、11番目の「住み続けられるまちづくりを」にもつながる取り組みだと話す。
好きなものを追い求めていけば将来につながる

2日間の撮影で、アカデミーの子どもたち総勢60名が5〜6人で一つの撮影隊を組み、元町ショッピングストリートで営業する飲食店や洋品店など11店舗を手分けして取材した。撮影を指導したのは、ドキュメンタリー映画「太陽と踊らせて」などを手がけた映画監督のリリー・リナエさん。ワークショップの指導は初めてだったが、依頼を受けた際、監督自身の初めての撮影体験を思い出したという。
「小学2、3年生の時に『好きに撮ってこい』とビデオカメラを渡されて、私は草むらの中をカメラごと突っ込んでいったんです。すると、ジャングルの中を動物が歩いているような画になって。工夫次第でこんな映像が撮れるんだという楽しかった経験が、大人になって映像の道に進んだことに強く結びついていると思います。だから今回も、映画に限らず好きなものを見つけて追い求めていけば、将来につながるというヒントにしてもらいたい。もちろん、一人でもフィルムメーカーが生まれてくれればうれしいですね」と期待を語る。
