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高い集中力と精度が求められる脳神経外科手術をテクノロジーでアシストし、術者や患者の負担を軽減できると期待される脳外科手術ナビゲーションロボットが、台湾の食品医薬品局より初めて承認され、ロボットを開発した台湾の医療スタートアップ企業が花蓮慈済医院とオンライン臨床試験学会を開催した。
8月11日(木)、台湾東部・花蓮市の花蓮慈済医院とブレインナビ・バイオテクノロジー社(以下、ブレインナビ社)はオンライン臨床試験学会「Academic Conference of Robotic-assist Frameless Stereotactic Brain Tumor Biopsy(ロボット支援フレームレス定位脳腫瘍生検学会)」を開催した。
プレインナビ社は台湾を本拠にする医療スタートアップ企業で、高リスクな手術の現場の課題解決に貢献する革新的なプラットフォームや医療ロボット技術の開発・設計で知られる。昨年には脳神経外科用の初の自律型ナビゲーションロボット「NaoTrac(ナオトラック)」が欧州CEマーク認証を取得、今月には台湾の食品医薬品局(TFDA)より医療補助機器の承認を取得した。
花蓮慈済医院と共同開催した学会には、世界5大陸から113人を超える医療界の国際的なオピニオンリーダーたちが参加。台湾の医療技術の実力、そして医療用ロボットの未来において台湾が有利なポジションにいることが示されるとともに、林欣榮花蓮慈済医院院長はブレインナビ社と同医院が“未来の手術室”をつくることを目標に花蓮市で設立準備を進めている世界初の「脳手術ロボットトレーニングセンター」に触れ、「未来の手術室プロジェクトはパーキンソン病の脳の血栓除去治療、低侵襲手術および幹細胞治療の運用に重点を置く」と抱負を語った。
脳神経外科の手術ではミリ単位の精度が求められ、手術を行う術者のストレスやヒューマンエラー、患者への負担の大きさが長年の課題となっているが、ブレインナビ社のナオトラックは独自のナビゲーションシステムを活用して手術計画を立て、術者のアシスタントとして機能させることができるため、手術時間の短縮や術中の負担も大幅に軽減される。
これらのロボット技術の基となる「Surface Mapping Auto-Registration Technology(SMART/表面マッピング自動登録技術)」プラットフォームは、ブレインナビ社が特許を取得しており、マシンビジョン、ロボティクス、AIを融合して、手術時におけるリアルタイムのイメージング(画像化)、正確性、最小限の侵襲性を実現し、脳神経外科のみならず、その他の手術にも拡張可能な技術だという。
ブレインナビ社は2022年末までに米国食品医薬品局(FDA)の認可を目指してナオトラックを承認申請する計画で、10月にサンフランシスコで開催される「CNS Annual Meeting(脳神経外科学会年次総会)」と、ワシントンD.C.で開催される「Taiwan Expo USA 2022」に参加し、ナオトラックと脳神経外科用内視鏡を紹介する予定だ。