2022-08-12 政治・国際

ウイルスバスター オードリー・タン―コロナ対策からサイバー攻撃防御まで―

© Photo Credit: AP / 達志影像

注目ポイント

ペロシ下院議長が8月2日深夜訪台した。中国はこれにすぐさま猛反発、台湾四方(よも)の海で大規模な軍事演習を展開。と同時に台湾主要機関などがサイバー攻撃を受けた。そんな中、オードリー・タン(唐鳳)デジタル担当政務委員は台湾初となるデジタル発展部部長(大臣に相当)に任命された。

≪ペロシ下院議長訪台に反発する中国≫

5月下旬、バイデン米大統領は、来日した際の記者会見で、米国は台湾防衛に関与すると言及した。しかしウクライナに軍事侵攻したロシアへの対抗措置として、米国を中心とした西側諸国が採った対抗手段は軍事介入ではなく経済制裁のみであり、それを見て習近平氏は台湾問題で米国が中国に介入することはないだろうと高をくくったとしても不思議ではない。習近平氏は国家主席3期目の再選を目指して地盤固めをすべく、今後5年間の権力構造が決定される北戴河会議に臨んでいた最中、米国のナンバー3であるペロシ下院議長が台湾を電撃訪問した。習近平氏の目論見がものの見事に外れた形となった。

中国は即座に猛反発、台湾周辺の海空域で大掛かりな軍事演習を始め台湾を威嚇した。更に総統府、国防部、外交部などの公的機関や、桃園国際空港がサイバー攻撃を受けた。特に公的機関にはこれまでに比べて約23倍もの未曽有のサイバー攻撃があり、セブンイレブンのモニターは突如「戦争屋のペロシは台湾から出て行け!」の掲示に切り替わった。

 

≪サイバー攻撃からの防御≫

中国からと思われるサイバー攻撃への対策について、オードリー・タン氏は自由時報のインタビューを受けた。

今回の攻撃はDDoSと呼ばれる分散型DoS(サービス拒否)攻撃で、不特定多数のコンピュータを踏み台にして、DoS攻撃を分散(Distributed)して行うものである。遮断するIPを特定することが難しく、現状ではセキュリティ対策は簡単ではないと言われている。しかしタン氏は、大量に流入するアクセス回数を制限(クリーニング)したり、ネットワークを分散(Distributed Networks)したりすることによってブロッキング攻撃を完全に排除したことを明らかにした。わかりやすく例えるならば、一度にたくさんの電話がかかってきて回線をパンクさせるのがDDoS攻撃だとすると、こちらは回線を増やして対応すればいいのだが、そうすればこれまでは消耗戦になるケースが多かった。しかしオペレーターを通さないで自動音声サービスやロボットを使用すれば非常にコスパよく対応できるように、DDoS攻撃から台湾を防御することができる。台湾はすでにこの対策ができており、この新技術があらゆる攻撃に耐えられることが証明されれば、すべての省庁に拡張できる、とタン氏は言う。

 

≪リスクのある商品の制限≫

タン氏は、かつては情報セキュリティトラブルの多くは人的ミスによるもので、パスワードを強化したり個人的に細心の注意を払ったりすることで解決できていたが、今は状況が違うと言う。セブンイレブンや台北駅の電光掲示板ジャックは心理的な効果を試みたもので、それを防ぐために2019年に制定された「危害國家資安產品限制原則(国家の情報通信セキュリティに有害な製品の使用に関する制限の原則)」を更に厳しく制限したり、適用範囲を広げたりして、情報戦のみならず心理戦にも動揺しないようにしなければならないと語った。


 

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