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〝中国のハワイ〟と呼ばれる海南島のリゾート地、三亜(さんあ)市が先週末、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるためロックダウン(都市封鎖)を導入し、移動制限をかけたことで、観光シーズンの同地を訪れている旅行客約8万人が足止めされ、不安と苛立ちが高まっている。
南シナ海に浮かぶ人口約925万人の海南島では昨年、全体で新型コロナの陽性例がわずか2件だったが、今月に入って新規感染者が突然、急増。島の中心都市・三亜には都市封鎖が敷かれたことで、約8万人の観光客に移動制限がかけられ行き場を失っている。
ロイター通信によると、中国国営CCTVは6日、三亜発の鉄道切符の発売が中止となり、三亜鳳凰国際空港の離発着便の8割以上がキャンセルされたと報じた。三亜市当局は6日、フライトがキャンセルされた旅行者には、ホテル料金を半額にすると発表した。
だが多くの客は7日、中国のメッセンジャーアプリ「WeChat」で、ホテル料金に割引が適応されていないとして行政当局に怒りをぶつけている。中国東部・江蘇省から訪れていたある旅行客は、同アプリに、「どこに苦情を言えばいいのか、自分の権利を守れるのか、いろいろ探っているが、今のところ当局からは何の反応もない」とつづった。
また、三亜の空港には島を脱出しようとする観光客が殺到。「どうして搭乗できないんだ!」などと怒鳴り声が飛び交い、空港職員らとの押し問答が続いている。当局によると、島を離れたい人は7日間にPCR検査で5回の陰性を証明しなければならないという。
三亜では今月に入り確認された新規感染者は有症状・無症状を合わせて1210人に上り、検出されているのはオミクロン株の亜種「BA5.1.3」だという。海南島では三亜のほか、儋州(だんしゅう)市、東方市、陵水リー族自治県、臨高県などでも数十件の新規感染が報告されている。
三亜で夫と子供の3人で休暇を楽しんでいた中国南部・江西省在住のヤンさんは、突然移動が禁じられたことで4つ星ホテルに延泊することを強いられ、思いもよらない出費に、ホテルの部屋で毎日、家族と共にインスタント麺をすすっていると明かし、「人生で最悪の休暇」だと不満をあらわにした。
海南島はコロナ禍が始まって以来、2年半にわたり海外からの外国人旅行者の立ち入りを禁止している。だが、中国在住でハネムーンのため三亜にやってきたという外国人カップルはロイター通信の取材に、フードデリバリーやホテルでの食事、海南島を出発する航空券の料金など全てが高騰し苦慮していると語った。
また、ホテルで入手できる食料も底をつき始めていると指摘。3月末から5月末までロックダウンが続いた「上海の二の舞にならないか心配している」と漏らした。
高級ホテルやリゾート施設が集まる三亜を中心に、海南島はハワイと緯度が同じで温暖な気候という理由から〝中国のハワイ〟と呼ばれ、国内一美しいとビーチとされる「亜龍湾」やダイビングなどのアクティビティも豊富の上、観光スポットも多く、中国でも人気のバケーション地となっている。