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米国のナンシー・ペロシ下院議員の台湾訪問に対する制裁措置として、4日から展開してきた中国の人民解放軍による台湾周辺での大規模な「重要軍事演習行動」が7日終了した。だが台湾国防部(国防省)は、中国軍が同日午前に台湾海峡で行った演習は台湾本島と台湾の艦船に対する攻撃を想定したリハーサルだったと判断。それに対抗するため、台湾陸軍は今週、「重砲射撃訓練」を実施すると発表した。
また、別の米シンクタンク、ランド研究所の研究員で、元海軍幹部のブラッドリー・マーティン氏は同紙に、「おそらく中国は目的を達成するために戦争をしたいとは考えていない」とした上で、「全面的な衝突には至らないレベルで強い圧力をかけるというのが、最もあり得るシナリオだ」と分析した。
WSJ紙によると、実際に戦火を交えるまではいかない紛争は「グレーゾーン」戦争とも呼ばれ、中国は台湾に加え、領土問題を抱える近隣諸国に対する戦術として利用している。
一方、中国が台湾周辺での軍事演習を続ける中、日本の与党・自民党では国会議員らが6日、東京都内のホテルで台湾有事を想定したシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」主催のシミュレーションを行った。
シミュレーションは27年、中国が武装漁民を尖閣に上陸させ実効支配するのと並行し、「無人機が台湾軍に撃墜された」と主張して台湾侵攻にも踏み切るという設定。日本政府は安全保障関連法に基づき、閣僚役の議員らが国家安全保障会議(NSC)に見立てた会議を招集。尖閣に武力攻撃事態、台湾に存立危機事態をそれぞれ認定し、自衛隊に防衛出動を命じた。
首相役を務めた小野寺五典元防衛相は、中国の弾道ミサイル5発が4日、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したことを踏まえ、「シミュレーションは、より現実味を帯び、緊迫感があった。台湾有事は日本の有事に波及することが明確になったのではないか」と述べた。
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