2022-08-08 政治・国際

中国の大規模演習は台湾攻撃のリハーサルか 台湾陸軍は今週「重砲射撃訓練」実施で対抗

注目ポイント

米国のナンシー・ペロシ下院議員の台湾訪問に対する制裁措置として、4日から展開してきた中国の人民解放軍による台湾周辺での大規模な「重要軍事演習行動」が7日終了した。だが台湾国防部(国防省)は、中国軍が同日午前に台湾海峡で行った演習は台湾本島と台湾の艦船に対する攻撃を想定したリハーサルだったと判断。それに対抗するため、台湾陸軍は今週、「重砲射撃訓練」を実施すると発表した。

中国人民解放軍はこの4日間、台湾の周囲6か所の海空域に演習エリアを設定。多数の艦船や軍用機、ミサイル、ドローンを投入し、台湾を包囲、攻撃する想定で実弾演習を実施した。共同通信は、「台湾だけでなく米国や日本を威嚇する意図が鮮明で、地域の外交、安全保障環境は悪化した」と伝えた。

台湾国防部は、中国人民解放軍で台湾方面を担当する東部戦区が7日、火力による地上への攻撃と遠距離からの空中への攻撃の訓練を重点的に実施したことを確認。それに対抗するため、台湾陸軍は9日と11日に台湾の南部沿岸周辺で「重砲射撃訓練」を行うと発表。部隊の戦闘能力をテストする狙いもあるとみられる。

また、台湾海軍からは対艦ミサイルの写真が公開され、台湾海峡の状況を24時間体制で監視しているとする声明が発表された。台湾当局は中国政府に対して、「理性的に自制をするように」と呼びかけ、日本を含めた周辺諸国に台湾への理解と支援を求めている。

中国が演習を実施する中、ワシントンでは駐米・秦剛(しん・ごう)中国大使をホワイトハウスに呼び出し、ブリンケン米国務長官は大規模軍事演習を「極めてケタ外れで、エスカレートした軍事対応だ」と表現し、「無責任」だとして中国を強く非難した。

だが、中国側は米国政府の懸念になど聞く耳を持つはずもなく、東部戦区は7日、台湾周辺での海空合同演習を計画通りに遂行するとともに、台湾国防部の報告通り、台湾上空を通過する長距離ミサイルを重点的に発射したことを公表した。

中国の大手データ会社は同日、中国海軍の昆明級駆逐艦(052型ミサイル駆逐艦)「南京」が5日時点で、台湾東部の花蓮沖12カイリ(約22キロ)以内に入ったことをSNSで公開。台湾が主張する領海12カイリ以内に、もし中国軍艦が入ったことが事実なら、異例の事態だという。

ただ、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、「中国が全面的な台湾侵攻に踏み出す能力はまだ持っておらず、向こう数年で実行する作戦としてはあまりに複雑でリスクが高すぎると指摘する専門家は多い」と報道。むしろ中国は、台湾を武力で抑え込むのではなく、締め付けて降伏させる道を選ぶとの見立てだという。

米ワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所のブライアン・クラーク上級研究員は同紙に、「中国は兵力を大量集結させて(台湾を)封鎖するような印象を与えることで、これを実行できると誇示する狙いがある」と指摘した。

また、別の米シンクタンク、ランド研究所の研究員で、元海軍幹部のブラッドリー・マーティン氏は同紙に、「おそらく中国は目的を達成するために戦争をしたいとは考えていない」とした上で、「全面的な衝突には至らないレベルで強い圧力をかけるというのが、最もあり得るシナリオだ」と分析した。

WSJ紙によると、実際に戦火を交えるまではいかない紛争は「グレーゾーン」戦争とも呼ばれ、中国は台湾に加え、領土問題を抱える近隣諸国に対する戦術として利用している。

一方、中国が台湾周辺での軍事演習を続ける中、日本の与党・自民党では国会議員らが6日、東京都内のホテルで台湾有事を想定したシンクタンク「日本戦略研究フォーラム」主催のシミュレーションを行った。

シミュレーションは27年、中国が武装漁民を尖閣に上陸させ実効支配するのと並行し、「無人機が台湾軍に撃墜された」と主張して台湾侵攻にも踏み切るという設定。日本政府は安全保障関連法に基づき、閣僚役の議員らが国家安全保障会議(NSC)に見立てた会議を招集。尖閣に武力攻撃事態、台湾に存立危機事態をそれぞれ認定し、自衛隊に防衛出動を命じた。

首相役を務めた小野寺五典元防衛相は、中国の弾道ミサイル5発が4日、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したことを踏まえ、「シミュレーションは、より現実味を帯び、緊迫感があった。台湾有事は日本の有事に波及することが明確になったのではないか」と述べた。

 

 

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