注目ポイント
米国のナンシー・ペロシ下院議長を代表とする米議員団が2日夜から3日にかけ、台湾で過ごした約18時間。台湾市民は米国ナンバー3の歴史的訪問に大きな興奮と、この先の不安を同時に示した。一方、中国のソーシャルメディア微博(ウェイボー)では、ペロシ訪台を阻止できなかった政府に対する怒りと不満を爆発させた。
「(中国共産党が)不平を示せば示すほど、うれしい」と、台北在住のイングリッド ・ホーさん(35)は3日、米紙ワシントン・ポストの取材にそう語った。「ペロシ議長の訪台はさまざまな結果を意味するだろうが、現時点では興奮が理性を上回っている」という。
ホーさんは多くの台湾市民2300万人と同様、何十年もの間、中国の脅威と向き合ってきた。「たぶん台湾人は恐怖には慣れているのかもしれない」とし、「私たちはこの紛争の中心にいますが、どういうわけか、まだ傍観者のように感じている。これからどうなるのか興味深い」とホーさんは続けた。
ペロシ氏は長年、中国共産党に対して批判的立場を徹底して貫き、台湾独立派などの間では根強い支持を集めている。1991年に北京・天安門を訪れたペロシ氏は、その2年前に当局により虐殺されたとする犠牲者を追悼するため、「民主主義のために命を落とした人々へ」と書かれた横断幕を掲げた。ペロシ氏はまた、ここ数年、香港の民主化運動を熱心に支持している。
ワシントン・ポスト紙によると、ペロシ氏の議員団が到着した2日、台北松山空港では少人数の支持者グループがペロシ氏らを出迎えた。その雰囲気は「新年へのカウントダウンのように」感じられたと、台湾与党・民主進歩党の林靜儀(りん・ちんい)議員はフェイスブックで表現した。
空港で「台湾へようこそ」と書いた横断幕を持った72歳の台湾人女性は、「ペロシ議長が支持を表明するため、来てくれたことをとてもうれしく思う」と謝辞を述べた。女性は、何十年にもわたり台湾の正式な独立を訴えてきたとした上で、「私たちは中国とは何の関係もない。中国との統一はできない」と主張した。
この夜、台北市内では、台湾で最も高い超高層ビル「台北101」には英語と中国語でペロシ氏へのウェルカムメッセージが映し出され、ライトアップされた。
そんな中、中国との統一を支持する人びとを含む少数のグループが、米国の星条旗を踏みつけ、同議員団に台湾からすぐに出ていくよう求める看板を掲げて抗議。中にはペロシ氏を「アメリカの魔女」と侮蔑するプラカードもあった。
そんな台湾訪問を終えたペロシ氏は、「中国共産党は世界の指導者が台湾を訪問し、台湾で繁栄する民主主義に敬意を表し、台湾の多くの成功に注目し、協力関係の継続を再確認するのを妨げることはできない」とし、〝勝利宣言〟とも取れる声明を発表した。
一方、中国では月間5億8000万人以上のアクティブユーザーを持つSNS微博は、2日午後10時40分ごろ、ペロシ議員団を乗せた航空機が台北松山空港に着陸した直後に、約30分にわたりサーバーがパンクし、不通になったことを謝罪した。