2022-08-04 ライフ

チベット仏教に由来する映画「呪詛」詳細を解明密教には大黒仏母がいるのか?黒母の手形とは?

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注目ポイント

チベット仏教と密教(タントラ)の修行者、伝達者としての私が「呪詛」を観賞して感じたいくつかの感想と解説を皆さんにシェアしようと思う。これは、さまざまな詳細を明らかにするものである。まず初めに、大黒仏母(黒母)はヒンドゥー教の性愛の流派からきている。


 

1)密教には本当に大黒仏母が存在するのか?

それは、しないとも言えるしするとも言える。チベット密教には、「マハーカーラ」という猛々しい女性神がいるが、これを直訳すると「大黒」となるが、一般的には「パルデンラモ(吉祥天女)」という名で知られている。これを大黒仏母の原型と考える人が多いが、実際はそうではなく、そのような認識は後述するように脱文脈的である。

しかし、大黒仏母像は画風、頭飾り、トンネル内の法衣の一部など、明らかにチベット仏教由来のものであり、再現されたものである。次に、ヒンドゥー教には「黒の母/時の母」という信仰があり、その詳細をここで見てみよう。この2人、特に後者は、本作で描かれた「大黒仏母」と名前も形も非常に近いものである。しかし、現在の信仰の中では、「大黒仏母」そのものは存在しない。

注目すべきは、本作で描かれる「神の起源」が、南インド・ディアンミアン(アーリア系僧院)-福建省-台湾陳一家のように見えることだ。

ディアンミアンとは、中国雲南省に伝わる密教の1つで、現在は消滅している。しかし、この仏母(女性の悪魔)信仰の起源は、南インドで盛んな「時の母信仰」と非常に密接な関係があるのだ。実際には、サンスクリット語のカーリー(Kālī)は「黒母」とも「時母」とも訳されるが、本稿では、この神と映画に登場する「大黒仏母」との混同を避けるために、「時の母」と呼ぶ。上記のリンクに加え、後述するように、この手は北インドの宗教的覇権への反発を象徴している。


 

2)大黒仏母は「仏」なのか?

答えは、いいえだ。"母なる仏"は"父なる仏 "に相当する言葉で、密教の中でも特定の流派である「至高のタントラ」で使われる言葉だ。至高のタントラ修行では、悟りを開いた心(仏)の性質を知恵と柔軟性の2つの面に分け、順に「母なる仏」「父なる仏」と呼び、視覚芸術や詩、賛美などで表現している。

おそらく、長年の翻訳によって習慣化されたであろう「仏」という言葉は、特に清末時代、大いに乱用されたのだろう。"仏 "や "生き仏 "といった言葉が当時は使われていたため、女性の神様を "仏母 (母なる仏)"と呼ぶ習慣が始まったのだ。例えば、当院(度母の家、台湾の宗教関連施設)の母体である女性菩薩は、慣習的に孔雀仏母や摩利支仏母とも呼ばれている(ただし、この「呪詛」の中の黒母とは異なり、とても優しい方だ)。

仏教用語で「仏」といえば、個人的な好き嫌いなど強い感情を持たず、それゆえに理性や知恵が高度に超越した悟りを開いた人を意味する。明らかに黒母(大黒仏母と同義)とは違う。

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