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台湾を強行訪問したナンシー・ペロシ米下院議長は3日、蔡英文総統と会談し、「米国は決して台湾を見捨てない」とし、台湾との安全保障や経済における結びつきを深め、支援を続けていく姿勢を強調。蔡氏も「台湾は引き下がらない」と述べ、民主主義を守る姿勢を示した。一方、ペロシ氏の訪台を止めるよう警告してきた中国は、報復として4日から台湾周辺で実弾射撃を使った〝重要軍事演習〟を行うと発表した。
ペロシ下院議長ら米議員団は2日深夜台北に到着し、翌3日午前、同市の総統府を訪ねて蔡総統や頼清徳(らい・せいとく)副総統ら台湾側の政権幹部と面会。ペロシ氏は、米国が50年前、中国と国交を回復する一方、台湾と断交した後、「台湾関係法」を成立させたことで、常に台湾を支持することを決意したとあいさつした。
蔡氏は、「意図的に高められた軍事的脅威に直面しても、台湾は引き下がらない。われわれは民主主義のための防衛線を固持し続ける」との決意を強調。「この重要な時期に、台湾への揺るぎない支持を具体的に行動で示してくれた」としてペロシ氏に謝意を述べた。
先日のバイデン米大統領との電話会談で習近平国家主席が「火遊びは必ず身を焦がす」と米国に警告した中国政府は、2日夜にペロシ氏らを乗せた専用機が台北に到着するや、すぐに米国のニコラス・バーンズ在中国大使を呼び、「極めて深刻な結果をもたらす」と怒りをあらわにし、軍事演習の実施を発表。台湾産の農水産物などの輸入停止も打ち出し、矢継ぎ早に経済制裁を発動した。
また、カンボジアを訪問中だった中国・王毅(おう・き)外相は、「完全なる茶番劇だ。米国は民主主義の看板を掲げながら、中国の主権を犯した。台湾の蔡英文一味は米国の太ももにしがみつき、民族の大儀を裏切った」と強い口調で批判。「挑発者は頭を割られて血を流すことになる」と脅迫してみせた。
中国国防省は2日夜には「中国軍は高度に警戒警備し、一連の軍事行動で対抗する」との声明を発表。台湾を担当する「東部戦区」は同日夜、台湾の北、南西、南東の海空域で合同訓練を行ったとし、台湾国防省は、台湾南西部の防空識別圏に同日、中国空軍のJ-16戦闘機10機、J-11戦闘機8機、早期警戒機など21機が進入したことを確認した。
また、ペロシ氏訪台への報復として、中国は人民解放軍が台湾を取り囲むように6か所の海空域で4日から7日まで実弾射撃を含む「重要軍事演習」を実施するとし、中国の航空当局はそれらの空域を飛行禁止にしたことが分かった。
だが、この軍事演習の対象海域に日本の排他的経済水域(EEZ)が含まれているとして、日本政府の松野博一官房長官は3日の記者会見で、中国側に懸念を伝えたことを明らかにした。
松野氏は今回のペロシ氏らの訪台について、「政府としてコメントする立場にない」と言及を避け、「台湾海峡の平和と安定は我が国の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても重要であり、台湾を巡る問題が対話により平和的に解決されることを期待する」と、これまで通りの政府見解を繰り返した。