2022-08-03 政治・国際

プーチン氏が「海軍の日」に新海洋ドクトリン ロシア海軍増強し、北極圏への進出も視野

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ロシアの「海軍の日」の7月31日、プーチン大統領は米国が世界の海を支配しようとしていると非難した上で、露海軍の影響力を北極海にまで拡大することを目指す新たな軍事ドクトリンに署名した。米政治専門ニュースサイト「ザ・ヒル」は、新ドクトリンが欧米に対抗するため海軍力を増強し、海洋大国化を目指すものだと解説した。

プーチン露大統領は同日、「海軍の日」に合わせ、サンクトペテルブルグで国民の愛国心を高揚させる演説を行った。それを前に了承した55ページに及ぶ改訂版「海洋ドクトリン」は、「ロシアが世界の海を支配しようとする米国の戦略的政策に対抗するため」、世界に存在感を示す「偉大な海軍」になることを目指すとしているとザ・ヒルは指摘。

その大きな一歩が、核弾頭搭載可能な超音速対艦巡行ミサイル「3M22ツィルコン」の配備だと英紙デーリー・メールが伝えた。同紙はプーチン氏がこの先数か月以内にツィルコンミサイルを海軍に配備する計画だとしている

また、プーチン氏はアドミラル・ゴルシコフ級フリゲート艦が最初に同ミサイルを搭載されて実戦配備されるとし、「鍵となるのはロシア海軍の戦闘能力だ。(同フリゲート艦は)わが国の主権や自由を奪おうとする者には電光石火のごとく対応する」と述べた。

同紙によると、超音速兵器の速度は音速の約9倍で、ロシアは昨年、ツィルコンミサイルの潜水艦を含む艦艇からの発射実験に成功している。

ザ・ヒルによると、新ドクトリンはまた、「ロシアは世界の海洋における国益を断固として固守し、十分な海洋力を持つことでその安全と保護が保証される」とし、その影響力を北極海にまで拡大することを目指すとしている。米国はこれまでロシアと中国に対し、北極圏への侵略的行動をしないよう警告していた。

プーチン氏は、ロシアが領土とする地域での「国益を守る」と断言。「われわれは今こそ直面する課題に対して結束しなければならない」とし、「国土というのは聖なる概念だ。それを守り抜かねばならない」とし、「海の日」の式典に召集された海軍兵士や将校たちに訴えかけた。

続けてプーチン氏は、北方領土を含む島々の周辺海域も同様だとし、「それは黒海であり、オホーツク海やクリル諸島周辺の海域だ。これらを、あらゆる手段で確実に守る」と述べ、強硬な姿勢を鮮明にした。

演説はウクライナ侵攻については言及しなかったが、プーチン氏は黒海やその内海であるアゾフ海でのロシアの海軍力保持を誓い、「わが国の主権を脅かそうとする者には強固な対応をする」と明言した。

そのアゾフ海の南を囲うクリミア半島の南部にある港町セバストポリでもこの日、「海軍の日」の祝賀行事が予定されていたが、ドローンによる攻撃で6人に負傷し、式典は中止された。ウクライナの領土だったクリミア半島はロシアが2014年に併合。セバストポリにはロシア海軍の黒海艦隊の司令施設が置かれている。

セバストポリのラズボジャエフ市長はSNSアプリ「テレグラム」に、「ウクライナの国粋主義者たちが今朝、ロシアの『海軍の日』を台無しにしようとした」と書き込んだ。市は住民に対し、「できる限り」屋内にとどまるよう求めた。これに対し、ウクライナ軍関係者は同日、関与を否定し、「クリミア解放は別の形でもっと効率的に行う」とテレグラムを通じ反論した。

ロシアが侵攻を続けるウクライナに対して米国が巨額の支援を継続する中、米露関係は冷戦以降、最も緊迫した状態になっているとザ・ヒルは指摘。そんな中、米国のブリンケン国務長官はロシアのラブロフ外相と7月29日、ウクライナ侵攻以来、初めて会談した。

電話会談でブリンケン氏は、ロシアがウクライナで占領地の編入を強行する動きなどを見せていることについて、「世界は認めない。重い代償を負わせる」とラブロフ氏に警告した。その上で「世界中がロシアの戦争目的の拡大を懸念している。プーチン大統領はウクライナ領を最大限、手に入れて主権国家としての独立を奪おうとしている」と非難した。

ラブロフ氏は米国とNATO(北大西洋条約機構)がウクライナへ供与した兵器が戦闘を長期化させ、市民の犠牲者を増やしていると批判。さらに、ウクライナでの〝解放地域〟で平和な生活に戻るための体系的な作業が行われていると主張した。

ウクライナ戦争とは別に、米女子プロバスケットボールリーグ(WNBA)のブリトニー・グライナー選手と、スパイ罪に問われたポール・ウィラン元海兵隊員の2人がロシアで拘束・収監されている問題で、米国で収監中のロシア人との交換なども協議されていると米メディアは報じている。

 

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