2022-08-02 政治・国際

台湾小売業の三国時代か?―進撃の巨人―

注目ポイント

コストコ、カルフールに次いで量販店3位の大潤發の買収が2週間前に発表された。買収したのはスーパーマーケット最大手の「全聯」である。量販店2位のカルフールも2023年半ばには「統一企業(7‐11)」が買収することを発表した。コストコ、統一、全聯、三国時代の幕開けである。

≪小売業界、独占が進む≫

台湾のコンビニ、スーパー、量販店はトップ2~3社が60%以上のシェアを占めている。コンビニでは統一(7‐11)が6503店舗で半数近くの46.5%を占め、ファミリーマートが22.0%で、この2社だけですでに68.5%となっている。スーパーは全聯だけで1100店舗、64.1%に達しており、2位の美廉社の5.6%を10倍以上引き離し一人勝ちである。量販店はどうかというと、日本でもおなじみのコストコが43.5%、カルフールが33.2%、3位の大潤發の10.9%を合わせるとこの3社だけで87.6%にもなる。(統計は全て2021年度)

このような状況下の小売業界で、今月立て続けにビッグニュースが飛び込んできた。7月15日、スーパー業界トップの全聯は大潤發の買収を、20日にはコンビニ業界トップの統一がカルフールの買収を発表した。これにより、コンビニの展開を主な戦略としてきた最大手の統一企業がスーパーマーケット業界に参入することとなり、小売業界のシェア拡大競争はますます熾烈になりそうである。

 

≪繰り返される買収劇≫

7年前、日本人が多く居住する天母地区のスーパーマーケット「松青(Matsusei)」が突然なくなった。日本人居住区の土地柄、他のスーパーでは滅多にお目にかからない日本の食材やお総菜、スイーツ、調味料など品揃えが豊富でとても重宝していた。その松青が全聯に4.5億元で買われたのだ。いつも入手できた日本製品が半減したので、ちょっとがっかりした。数年後、日本製品が多いもう一軒の高級香港系スーパー、デパ地下のJasonsも、庶民スーパー「頂好(Wellcome)←ミススペリングではない」もいつの間にかカルフールの看板に変わっていた。そして今、そのカルフールが統一に290億元で買収されることになった。まるでビジネス版食物連鎖を見ているようだ。

 

≪二人の巨人から目が離せない≫

全聯を率いるのは林敏雄(72)社長である。林社長は台北商業高校夜間部を卒業後、裸一貫で一からたたき上げ、全聯を業界トップにまで大きくしてきた。対して、着実に勢力を伸ばす統一グループを指揮するのが羅智元(66)社長である。羅社長はUCLA卒、その後統一グループ創設者の一人娘と結婚したサラブレットで、2代目社長として初代から引き継いでコンビニ、デパート、建設、保険、クロネコ、スタバ、ミスド、プロ野球チームなどなど、数えきれないくらい多方面に幅広くビジネスを広げてきた。統一企業はスーパー分野初挑戦である。どんなスーパーを展開してくれるか、楽しみである。育った環境もタイプも違うこの二人の巨頭が、今後どのように戦いを繰り広げていくのか、統一企業と全聯とコストコの三国時代から目が離せない。

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