注目ポイント
新型コロナウイルスの第1波以降、世界のコンテナ輸送業界は活発化している。しかし、間もなくこの流れは逆転し、同業界は需要の縮小と供給の増加という「ブルウィップ効果」を経て、状況が急速に悪化する可能性がある。
世界の海運業界の大部分は、終焉を迎えるかもしれない。大手コンテナ船会社「マースク」のCEOであるソーレン・スクー氏は、次のように指摘している。「グローバリゼーションは崩壊こそしていないものの“貿易障壁”を減らしてビジネスの自由化を追求する時代は終わったのである。また、8月には海運ブームが反転し、需要の縮小と供給の増加というブルウィップ効果が発生するだろう」。
海上輸送ブームの逆転現象は8月に起きる
世界第2位のコンテナ船グループであるマースク社の本社はデンマークのコペンハーゲンにあり、運輸とエネルギー(海洋石油開発)を中心とした世界的に有名な多国籍コングロマリットである。年間1200万個のコンテナを輸送し、トラック、バージ、鉄道を組み合わせた完全なロジスティクスネットワークを持っている。
先日、同社のスク―氏は、「フィナンシャル・タイムズ」の取材に対し「欧米のメーカーが国内に生産を戻す気配はほとんどないため、代わりにアジアのサプライヤーを増やしている。世界の貿易はGDPの成長とともに増加していて、この成長傾向は貿易の自由度を高めるものではないが、同じように急速に逆転するものでもないだろう」と語った。
「フィナンシャル・タイムズ」によると、過去に多くのビジネスリーダーが、ポピュリストの政治家を前に「グローバリゼーション」は攻撃にさらされると主張してきたように、スク―氏のコメントは楽観的な印象を受ける。しかし、マースク社は世界貿易の方向性を示す指標でもあるのだ。
またスク―氏は、ポピュリズムが米国に影響を与え、新しい貿易協定の欠如につながったことを認めている。現在のところ、サプライチェーンに大きな変化は見られていないが、世界経済の停滞により、上半期のコンテナ輸送量は減少し、早ければ8月にも活況だった流れの逆転現象が起きると強調した。
ビジネスの中で顧客の需要を正確に予測することが難しいため、企業は資源配分を最適化するために、在庫を確保しておくことがよくある。しかし、これはまた、川上から川下までのサプライチェーンにおける安全在庫予測の増加、さらには過剰な在庫確保にもつながる。これがブルウィップ効果だ。
一部地域ではターミナルが混雑しサプライチェーンは未だスムーズではない
一部の地域の港湾は行き詰まっている。ロッテルダム港は、外航船の運航スケジュールが不安定なことや輸入コンテナの滞留時間が長いことから、ここ数か月間、コンテナヤードが非常に混雑した状態が続いていると発表している。