注目ポイント
台湾では「鬼月」と呼ばれる旧暦7月にあの世の扉である鬼門が開き、先祖や無縁仏の霊がこの世に戻ってくるとされています。日本のお盆にも似た風習ですが、久しぶりに人間界にやって来た霊たちをモデルにしたテレビCMが多く放送されるのは台湾ならでは。ジャパニーズホラーの立役者もレギュラー参戦する、台湾広告界の夏の風物詩をご紹介します。
台湾には旧暦に沿った行事が1年を通してたくさんあり、夏は「鬼月」を迎えます。鬼月の期間は旧暦7月1日~7月29日までの約1か月。2022年の西暦では7月29日~8月26日がそれにあたります。
霊界の門である「鬼門」が開き、鬼(=日本でいう幽霊)が人間界に戻ってくるといわれています。鬼月の真ん中にあたる日は「中元節」と言われ、最も大きく門が開く日。「普渡」が行われ、無縁仏を供養するための儀式が台湾各地で行われます。
私が台湾の鬼月という文化を知ったのは、中国語の先生からとあるYouTubeを教えてもらったことがきっかけ。今回は、台湾のCMを観ながら鬼月を紹介していきます。
【2016全聯中元祭 做好事篇】
このCMは、台湾にあるチェーン店「全聯福利中心」というスーパーマーケットが製作したものです。鬼月の期間は、あの世から来た鬼にたくさんのお供え物をするため、スーパーマーケットや量販店では特設コーナーが作られます。それに合わせてCMも放送されるのです。このCMに出演しているのは「全聯先生(全聯さん)」という名前で、台湾でとても有名なタレントさんです。
鬼月で帰ってきている鬼達が、全聯先生には見えている……という設定。当時はこのCMに続編があり、実際に見えているバージョンの CMも放送されていたようです。
次は「貞子」をモチーフにしたバージョン。
【2013 全聯SMART中元節系列廣告 貞子篇 賺人熱淚完整版】
2013年から、貞子シリーズで鬼月のCMを放送してきた全聯福利中心。シリーズ最初では、大家族に歓迎されて迎え入れられ貞子が喜ぶ姿が見られます。全聯先生が貞子に渡している顔を洗う桶と水も、実際のお供えものに準備されるものだそうです。
ちなみに台湾では、無縁仏を「好兄弟」とも言います。良き兄弟、という意味で日常的にも使われている中国語。鬼月は、この世に好兄弟がたくさん来ているため「海に引き込まれてしまうので泳いではいけない」「連れて行かれてしまうので夜中に遊びに行ってはいけない」など、好兄弟に注意するためのたくさんの禁忌があります。
この「好兄弟」を題材としたCMもあります。こちらは2016年に放送された、カルフール(家樂福 Carrefour)のCMです。
【鬼來舞? 直擊好兄弟賣場開趴! 澎湃中元辦桌趴賓客即將現身!】
上記2つとは打って変わって、とても楽しそうな雰囲気。辦桌趴とは辦桌(=屋外で、テーブルにたくさんの料理を出して楽しむ宴会)趴(=パーティ)のこと。好兄弟は、CM内で「Good-brother」と訳されていますね。