2022-08-01 政治・国際

月イチ連載「カセットテープから台湾がきこえてくる」第3回:L.A.Boyz『Phat』

注目ポイント

音楽家でアジアンポップカルチャー研究も行う菅原慎一さんが、台湾を感じられる選りすぐりのカセットテープを紹介する月イチ連載。今回取り上げるのは、90年代の台湾を一世風靡したヒップホップクルーL.A.Boyzの一作。“衝撃のカバー曲”も収録されているそうです。ちなみに、菅原さんは新バンドSAMOEDOのデビューアルバムを7月にリリースしたばかり。こちらもぜひチェックしてみてください。

今回紹介するのは、1992年デビューのL.A.Boyzという、ヒップホップやブラックミュージックを台湾のお茶の間に取り入れた初めてのグループの6枚目のアルバム、1996年の「Phat 」(中国語題「炫」)です。

彼らは兄弟といとこで形成された3人組で、その名の通り青春時代をLAで過ごしました。アメリカで育ち、西洋の最新の音楽に触れ、それを表現していましたが、プロデューサーの目に留まるとあっという間に台湾で売り出され、一世風靡したんです。

はじめはアイドル的な売り出し方をされていた彼らの良さを、僕もあまり理解していなかったのですが、彼らの他のカセットアルバムを買った帰り道、台北のショップ<PAR STORE>に立ち寄って店主のモンキーくんに見せたら、「これはいいよ!いいもの買ったね!」「彼らは台湾のスチャダラパーだよ」って言われて。そこからしっかり集めはじめました。今ではフェイバリット・アーティストです。

L.A.Boyzは多作ですが、その中でもこの作品を選んだ大きな理由は、アルバムのラストに衝撃のカバー曲が入っていること。世界に誇る日本人アーティスト、YMOの「君に、胸キュン」が収録されていて、ほぼカバーというか、コピー、いや、まるでカラオケですね(笑)。

で、本当かどうかわからないんですけど、クレジット欄に「製作人/Y.M.O.」とあります。しっかりローマ字で「SAKAMOTO・TAKAHASHI・HOSONO」、そして「MATSUMOTO」って書いてあって。松本隆、はっぴいえんど混じっちゃってる。と思いましたが松本氏は原曲の作詞をされていましたね。色々な事情がありそうですが、やはりサブスクにはあがっていません。ちなみに歌詞は完全オリジナルで、タイトルは「ANGEL'S SMILE」(天使的笑)です。

L.A.Boyzには、中華圏にR&Bを持ち込んだ最初の人物と言われている陶喆(David Tao)や、王治平(Bing Wang)という、現在に至るまで台湾の音楽シーンを牽引してきた超重要人物が関わっています。日本の当時の作品よりも、西洋のエッセンス直輸入感があって、さまざまなネタを直で入れてくるのが痛快です。これを読んで気になった方は、色々探して聞いてみてください。

 

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