注目ポイント
嫁がゴジラのフィギュアを勝手に親戚の子にあげたことで、30代台湾男性がキレて、離婚すると騒いでいる。自分が尊重されていないと思う経験は誰にでもあって、ネット民は「無断で処分しちゃダメ」とか、「夫の個性も尊重して」とか、「離婚するほどのことか」など、予想以上に盛り上がりを見せている。
≪闘いの始まり≫
真夏の太陽が燦々と照り付ける7月のとある金曜日、出張から帰ってきた30代男性は趣味で集めているゴジラのフィギュアが一つなくなっているのがわかって妻に問いただした。妻が言うには、親戚の子が欲しいとおねだりするので、あげたとのこと。それを聞いて夫はカンカンに怒り、妻は同じものを買ってくると言ったが、夫は同じものを見つけるのはほとんど不可能だと言って、その日の夜、十数万元分のゴジラフィギュアを自分で買ってきた。そんな夫に妻は逆ギレし、実家に帰ってしまった。妻はLINEで夫に謝らないとうちに帰らないと言い、夫は何についてオレのほうから謝るのかと言い返し、妻はそのやり取りをネットに公開してしまった。今までの鬱憤がたまっていた夫はLINE上で離婚を切り出し、驚いた妻は態度を軟化したが、まだ解決には至っていないようである。
≪匿名公社(台湾版2チャンネル)の反応≫
この騒動とほぼ同時期、台北市長や高雄市長、市議会議員などを選出する重要な地方選挙前の民進党全国党員代表大会(全代会)が行われたが、台湾版2チャンネルやテレビニュース、新聞、ネットニュースではこの夫婦喧嘩の方が全代会のニュースより大々的に取り扱われるくらい世間から注目された。
ネット掲示板やインフルエンサーのブログでは、妻の態度や、妻の母親が口を挟んだことなども批判されているが、根底にあるのは、夫婦間の問題でも男女間の問題でもなく、誰もが似たような悔しい経験をしたことがあるということだ。
≪一人一人の宝物≫
この話は目立ちたがり屋の作り話だという流言も一部にあるが、犬も食わないはずの夫婦喧嘩が、一大政治イベントよりも盛り上がったのにはそれなりの訳がある。
懐かしいブリキのおもちゃ、胸躍る戦隊ものや怪獣の人形(今はフィギュアと言う)、子供のころはできなかった漫画の全巻大人買いのみならず、個人が大切に使ってきた本や服やアクセサリー、お気に入りのコスメなど、家族や恋人も含め、他人には理解されない個人の好みや趣味を土足で踏み荒らされた経験のある人がいっぱいいる。「どうせもう使ってないだろ」、「もう大人なんだから」、「たかがおもちゃなのになんでそんなに高いの」、「家族なんだから勝手に使っても問題ない」など、心無い言葉を浴びせられたことが一回や二回は誰にもあるはずだ。それだけならまだしも、勝手に捨てられたり、無断で他人に譲渡されたり、知らぬ間にフリマやネットオークションで売られたりして泣くに泣けない目にあった人もいる。趣味や大切なものは一人一人違っていい。認められなくてもいいからせめて放っといてくれないか、と思う。どんな趣味であれ、他人の価値観を大切にしてほしい、という切実な願いを持った人たちがこの話題を盛り上げているのだ。