注目ポイント
発熱や皮膚の発疹といった天然痘に似た症状を引き起こす「サル痘」の感染拡大を受け、世界保健機関(WHO)は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言した。日本でも東京都内で25日、初めての感染が確認された。コロナ禍が終息しない中での新たなウイルスの感染拡大。サル痘とはどれほど深刻な脅威なのか―。
WHOのテドロス事務局長は23日、サル痘について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたると判断。WHOでは緊急事態と認定するかどうか専門家の意見は割れたものの、感染経路がほとんど解明されていない中、世界で急速に広まっていることなどを考慮。天然痘と違って病原性は必ずしも高くないが、このまま流行拡大を許すと〝第2の天然痘〟になる恐れがあることから、今回の緊急事態宣言に至った。
WHOによる緊急事態宣言は2009年以来7回目。最新のものは20年の新型コロナウイルス感染によるパンデミックだ。
「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」とは、WHOの国際保健規則により、「国際的な疾病の蔓延を通じ、他国への公衆衛生上のリスクがあり、世界規模の対応が必要と判断された緊急な出来事」と定義されている。WHOは現在、新型コロナウイルスとポリオの感染拡大について緊急事態の宣言を継続しており、サル痘は3つ目となる。
WHOによると、サル痘のリスクは世界的には「中程度」であるが、欧州では「高い」とし、「さらに国際的に広がるリスクは明らかである」という。WHOのデータによると、これまで世界でサル痘の症例は1万6016件あり、うち4132件が先週のもの。現在、75の国と地域で発生し、死亡は5人となっている。また、欧州地域の総症例数は1万1865件と最も多く、過去7日間だけで2705件の発症が確認されている。
サル痘は、アフリカ中部および西部の動物に見られるウイルス感染症で、ヒトへも感染する。風土病とされるこれらのアフリカの地域以外での症例もまれに確認されているが、最近のような感染拡大は前例のないものだという。欧州以外では米国、カナダ、オーストラリア、ナイジェリア、イスラエル、ブラジル、メキシコなどでも症例が報告されている。
中でも米ニューヨークでは感染者が25日、1000人を超え、22日時点で同市だけで全米の感染者のおよそ3割を占め、感染拡大の中心地となっている。また、ブラジルではサル痘感染者が696人に上り、うち506人はサンパウロ州で確認された。
WHOによると、新たな感染は主に男性同士で新たなパートナー、または複数のパートナーとの性行為を通じてのものだが、専門家はサル痘が密接または親密な接触によって広がるため、誰でもサル痘ウイルスに感染する可能性があることを強調。国連は、アフリカやLGBTQの人たちに対する一部メディアの報道内容が「同性愛嫌悪と人種差別的なステレオタイプにつながり、差別を助長させる」として警告した。