2022-07-26 政治・国際

WHOが緊急事態を宣言した「サル痘」 すでに世界75の国と地域で感染が報告

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

発熱や皮膚の発疹といった天然痘に似た症状を引き起こす「サル痘」の感染拡大を受け、世界保健機関(WHO)は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態であると宣言した。日本でも東京都内で25日、初めての感染が確認された。コロナ禍が終息しない中での新たなウイルスの感染拡大。サル痘とはどれほど深刻な脅威なのか―。

WHOのテドロス事務局長は23日、サル痘について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたると判断。WHOでは緊急事態と認定するかどうか専門家の意見は割れたものの、感染経路がほとんど解明されていない中、世界で急速に広まっていることなどを考慮。天然痘と違って病原性は必ずしも高くないが、このまま流行拡大を許すと〝第2の天然痘〟になる恐れがあることから、今回の緊急事態宣言に至った。

WHOによる緊急事態宣言は2009年以来7回目。最新のものは20年の新型コロナウイルス感染によるパンデミックだ。

「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」とは、WHOの国際保健規則により、「国際的な疾病の蔓延を通じ、他国への公衆衛生上のリスクがあり、世界規模の対応が必要と判断された緊急な出来事」と定義されている。WHOは現在、新型コロナウイルスとポリオの感染拡大について緊急事態の宣言を継続しており、サル痘は3つ目となる。

WHOによると、サル痘のリスクは世界的には「中程度」であるが、欧州では「高い」とし、「さらに国際的に広がるリスクは明らかである」という。WHOのデータによると、これまで世界でサル痘の症例は1万6016件あり、うち4132件が先週のもの。現在、75の国と地域で発生し、死亡は5人となっている。また、欧州地域の総症例数は1万1865件と最も多く、過去7日間だけで2705件の発症が確認されている。

サル痘は、アフリカ中部および西部の動物に見られるウイルス感染症で、ヒトへも感染する。風土病とされるこれらのアフリカの地域以外での症例もまれに確認されているが、最近のような感染拡大は前例のないものだという。欧州以外では米国、カナダ、オーストラリア、ナイジェリア、イスラエル、ブラジル、メキシコなどでも症例が報告されている。

中でも米ニューヨークでは感染者が25日、1000人を超え、22日時点で同市だけで全米の感染者のおよそ3割を占め、感染拡大の中心地となっている。また、ブラジルではサル痘感染者が696人に上り、うち506人はサンパウロ州で確認された。

WHOによると、新たな感染は主に男性同士で新たなパートナー、または複数のパートナーとの性行為を通じてのものだが、専門家はサル痘が密接または親密な接触によって広がるため、誰でもサル痘ウイルスに感染する可能性があることを強調。国連は、アフリカやLGBTQの人たちに対する一部メディアの報道内容が「同性愛嫌悪と人種差別的なステレオタイプにつながり、差別を助長させる」として警告した。

日本の国立感染症研究所などによると、サル痘のウイルスの潜伏期間は通常7日~14日間で、潜伏期間のあと発熱、頭痛、リンパ節の腫れ、筋肉痛などが1日~5日間続く。その後、発疹が現れ、顔面から始まり体じゅうに広がるのが典型的なパターン。徐々に膨らんで水疱(水ぶくれ)になり、うみが出てかさぶたとなり発症から2~4週間で治癒するという。

ほとんどの場合は軽症で自然治癒するが、中には肺炎や敗血症の合併症を引き起こすことがあり、若年層ほど重症化リスクが高いとされている。また、医療従事者の感染はこれまで世界で10例報告されているが、うち9件は業務以外での感染だった。

一方、日本の外務省は全世界を対象に、サル痘に関し、渡航に十分な注意を促す感染症危険情報レベル1を出した。レベル1は4段階の危険情報のうち、一番低い。

政府による25日の関係省庁会議では、この感染症の情報収集に最大限努めることや、原因となるウイルスの感染力や病原性、感染防止策などの情報を国民に提供することを確認。また感染の疑いがある人が出た場合に備え、検査や医療機関の受け入れ態勢の準備を進めることも決定した。

厚生労働省などによると、25日に日本でサル痘感染が初めて確認されたのは、欧州から帰国した都内に住む30代の男性で、都内の医療機関に入院しているという。

磯崎官房副長官は同日、記者会見で「関係省庁においてWHOとも連携しながら国内外の発生動向を監視し、必要な対策を講じる」と述べた。

 

オススメ記事:

ウクライナ戦争で存在感示すトルコ大統領 エルドアン氏はバイデン政権の悩みの種

ウクライナ国防相「戦場は貴重な実験場」 武器メーカーに新兵器の提供を呼び掛け

「戦争状態」にある台湾の交通環境(前編)

「戦争状態」にある台湾の交通環境(後編)

ホンハイがインドネシアに1兆台湾ドル投資へ新首都のスマートシティで新たな市場の開拓

あわせて読みたい