注目ポイント
その劣悪さから「戦争状態」とも称される台湾の交通環境を考察する前後編の後編。行政レベルでも常態化している自己責任論や、問題の原因を超自然的な現象と結びつけようとする神秘化を巡るトラブル、歩行者やバイク利用者を置き去りにした車優先の政策などを引き合いに出しながら解決の道筋を探る。
(引用:Facebookページ高雄好過日協會、図製作劉航遠、2022/6/26の投稿)
次に台湾交通部の炎上事件を紹介する。2020年6月、台湾の元交通部部長(日本の国土交通省大臣にあたる)林佳龍が出演した一つの交通安全教育動画が物議を醸した。
この動画は、林佳龍元部長が高齢者に対し歩行時の交通安全意識を伝えるという内容だ。「大型車には死角が多く、内輪差があるため、大型車を見かけたら3歩退きましょう」といった内容だ。これは一見間違ったことを言っていないが、この動画の内容は台湾で多くの人に批判された。批判の内容は、「歩行者に責任を押し付けるな」「台湾は歩行者より自動車の利益を優先させるのか」「その前に歩道をちゃんと整備しろ」といったものだ。
これら批判に対し、交通部は動画の意図は決して「人は車を譲る」ことを教え込む目的ではないことを釈明し、交通部の立場はあくまで「歩行者優先」であることを強調した。しかしこの動画が問題視されている時点で、やはり行政が歩行者に「防衛的歩行」を教え込むことに、多くの不満が蓄積されていることがわかる。
文字数の関係上これ以上列挙しないが、他にも交通部が開く道路安全の記者会見など、上記のような行政の姿勢は度々問題視されている。これらに対して、交通問題に取り組む劉亦はこう指摘する:
“なぜ(行政は)高齢者に「防衛的歩行」を指導するのか。それは自動車の「攻撃的運転」が容認されているからではないか。自動車に「歩行者を守る運転」を教えるべきではないのか。”
・神秘化
次に、②神秘化についてだ。これはつまり、交通問題に対し、神秘的(超自然的)な現象に原因を求めるところだ。例えば、事故にあった際「運が悪い」「祟りがある」などと考えるところだ。
私たちは生きるにあたり、ある程度見えない力に頼ることがある。これは人間社会において普遍的な行為だ。交通環境に関して言うと、例えば、台湾においては日本と同様、交通安全のお札(ふだ)をもらい、車にかけたりしている。しかし、上記の「意外」と言う表現を指摘したように、「運が悪い」などと帰結することは、他の具体的な外部環境の問題を軽視することになる。