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米国のオースティン国防長官は今週、ウクライナ軍が米国供与の高機動ロケット砲システム・HIMARS(ハイマース)を効果的に使い、大きな戦果を出していると説明した。ウクライナのレズニコウ国防相も、ハイマースにより約30か所のロシア軍の指令所や弾薬庫を破壊したと報告。同時に新兵器開発にとって戦場は「貴重な実験場」だとして、パートナー国の兵器メーカーに新兵器を提供するよう訴えた。
米国のオースティン国防長官は20日に開かれたNATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)の加盟国などの国防担当者で構成する「ウクライナ国防連絡グループ」会合で、米国はウクライナへの兵器供与パッケージにハイマースを4基追加することを明らかにした。
米国はすでにハイマース12基をウクライナに送っており、同時にウクライナ兵200人に同システムを使用するための訓練を終えている。戦地ではロシア軍の前線司令部や補給網、野砲や対空防衛システムなどをハイマースで攻撃しているという。
マーク・ミリー米統合参謀本部議長は、「(このような攻撃が)ロシア軍の兵員補給や、兵力の指揮・コントロール、ひいては不法な侵略戦争を遂行する能力を着実に削いでいる」と会合後に語った。
オースティン長官とミリー議長は合同記者会見で、ロシア軍がウクライナ各地で容赦ない砲撃を継続する中、西側はウクライナへのさらなる軍事支援を急いでいると説明。オースティン氏は、「ことの緊急性をよく理解している」とし、「世界各国は今、一刻も早く必要な兵器と弾薬を用意するために最善を尽くしている」と述べた。
ミリー氏は、すでに5か月になろうとするこの戦争が、持続性と長距離砲が双方にとって不可欠な〝消耗戦〟で、短期的にはロシアは「限られた利益」を得るため、ウクライナ東部ドンバス地方でウクライナ軍が死守する地域の砲撃を激化させるだろうと予想。その上で同氏は、この「限られた利益」のため、ロシアは生命と軍備面で「信じられないほどの犠牲」をもたらしていると強調した。
さらに、ロシア軍と親ロシア派が多くの地域を占領したドンバス地方だが、ミリー氏は、ドンバスは「まだ負けていない」と明言。「ロシアは奪った領土に見合った分だけ相当の犠牲を払っている」とし、ウクライナ側が激しく抵抗していることを指摘した。
米政治専門誌「ポリティコ」によると、米国は先月発表した4億5000万ドル(約624億円)の軍事援助パッケージの一部として、すでにロケットランチャーを出荷した。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、米国のウクライナに対する軍事援助は約61億ドル(約8461億円)に上っている。加えて、「ハイマースと砲弾をさらに追加支援する」(オースティン氏)という。
一方、米CNNによると、ウクライナのレズニコウ国防相は19日、ウクライナ軍は8基のハイマースを使用しており、すでに約30か所の指令所や弾薬庫を破壊したと発表。「これにより、ロシア軍の進攻は著しく遅くなり、砲撃の激しさも劇的に減少した」と米シンクタンク、アトランティック・カウンシルとのリモート会議で明かした。