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この夏は世界の航空会社が、コロナ禍の規制によりほぼ冬眠状態だった旅行業界全体の復活を示すはずだった。ところが、そんな期待からは程遠く、数十年に一度の最も混沌とした旅行シーズンになりつつある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、そんな状況を詳しく伝えた。
WSJ紙は空港と航空会社が運営上抱える致命的な問題は、荷物の積み下ろしをする旅客手荷物取扱業務スタッフの少なさ、新規または再雇用された操縦士に必要な長い訓練期間、今も続出するコロナ感染による欠勤者、安全な飛行に不可欠な航空管制官の不足などを挙げる。
人手不足により大混乱の焦点となっているロンドン・ヒースロー空港は先週、ロンドン・ガトウィック空港、フランクフルト空港、アムステルダム・スキポール空港に続き、航空会社の運航を制限することを決定。コロナ禍以前はドバイに次ぎ、国際線の乗降客数が世界2位だったヒースローは、9月11日までの出発旅客数を1日10万人に制限すると発表したのだ。
ヒースローの広報担当者によると、乗客数はコロナ禍前の約80~85%に戻ったとしているが、航空会社に対応する職員は約70%しかおらず、多くの航空会社も地上クルーや手荷物スタッフの人手不足が続いている。
そのヒースローで今月、大規模な紛失や乗せ間違いが発生。デルタ航空は11日、エアバスA330を乗客無しで、発見・回収したスーツケースなど1000個だけを積んで米デトロイトまで飛ばすという異例の対応に迫られた。そんなトラブル対策のため、アイスランド航空グループはアムステルダムに十分な地上スタッフが不足していたことから、同地行きの便で手荷物スタッフを派遣した。
紛失荷物に関する専門データはないが、世界の航空会社が使用する荷物追跡ソフトを管理するスイス企業SITAによると、1月~3月の間に乗客が紛失した手荷物の数は前年比で3倍、今年半期では前年比5倍にも上った。
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