2022-07-20 政治・国際

今夏、コロナ禍から復活狙う航空業界に難題 人手不足の対応間に合わず遅延・欠航多発

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

この夏は世界の航空会社が、コロナ禍の規制によりほぼ冬眠状態だった旅行業界全体の復活を示すはずだった。ところが、そんな期待からは程遠く、数十年に一度の最も混沌とした旅行シーズンになりつつある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、そんな状況を詳しく伝えた。

WSJ紙によると、フライトはキャンセルされ、遅延は慢性化。手荷物は紛失し、チェックイン、荷物のドロップオフ、保安検査場で長蛇の列を作り、何時間も待たされることに旅行者は辟易しているという。だが、ほかにも多くの不具合が―。コンピューターシステムは稼働超過、もしくはネットワーク内のリンクがことごとく壊れ、航空会社や空港の問題を悪化させているというのだ。

旅客手荷物取扱業務スタッフと保安検査担当者が不足しているため、乗客はスムーズにチェックインできず、フライトの遅延につながっている。また、5月にはカナダ・トロント空港に到着した2700便で起きたような、ハブ空港での入国審査や税関職員の人手不足は、乗客が航空機内で長時間待機させられるという事態を引き起こした。

その結果、機長や客室乗務員がより長い日数を勤務すれば、夜間メンテナンスにかかる時間が少なくなることを意味し、その繰り返しで、乗務員と航空機材が不足するという悪循環を生み出している。

そんな中、コロナ禍で収益不足に苦しむ航空会社は今年、春と夏に向けて大幅な増便を計画。だが、パンデミックにより20年に取らざるを得なかった事業縮小措置の中には、いきなり反転させることが困難なものもあるとWSJ紙は指摘する。航空業界は新たな人員を採用する場合、フライトシミュレーターを長時間使った訓練や身元調査が必要なため、迅速な人員補給ができないのだ。

航行遅延が相次ぐことに対処するため、空港によっては乗客数と便数に制限を課し、一部航空会社は新たに強化したスケジュールを再び減便。乗客は旅行計画の再考を迫られている。

米デルタ航空のエド・バスティアンCEO(最高経営責任者)は、「わが社も増収を得るため、できる限りのことをやってきた」とした上で、「(空港による乗客と便数の制限に)同業者もある程度同じだと思うが、不意打ちを食らったような感じだ」と失望感をあらわにした。

デルタはその後、増便計画を撤回。結果的には5月と6月に相次いだ遅延と欠航も減少し、運航の安定につながった。そのため、需要が引き続き堅調であるにもかかわらず、少なくとも年内は増便する予定はないとデルタ幹部は明かした。

実際、多くの国は海外旅行規制を撤廃し、フライトの大部分は予定通り運行しているが、混乱はコロナ禍前から大幅に増加している。

米航空データ専門企業フライトアウェアによると、トロント・ピアソン国際空港では、6月1日~7月12日までの期間、全便中52・9%が遅れて出発した。これは、1000以上の便があった空港の中では最高値だという。ドイツのフランクフルト空港とパリのシャルル・ド・ゴール空港では、それぞれ出発の46・44%と42・8%が遅れ、ロンドン・ヒースロー空港では40・2%の遅れがあった。

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