2022-07-19 政治・国際

得をしたのは誰?-台湾のコロナ保険-

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注目ポイント

あの大人気ドラマ「半沢直樹」の中で、「晴れの日に傘を貸して、雨の日に取り上げる」というセリフが出てくるが、去年の初頭から本格的に始まった台湾のコロナ保険も、感染者数と政府の方針に翻弄された末、紆余曲折、ドラマと同じようなことになってしまったように思える。

≪最初のコロナ保険は神保険≫

台湾のコロナ感染者数は、当初からずっとゼロか一桁台をキープしてきたが、2021年の5月に感染者が増加、といっても、せいぜい600~700人台であった。台湾の保険会社、台湾産物保険は、2020年12月からコロナ保険の販売を開始した。保険料500元(≒2280円)を一回支払うと、隔離時に10万元(≒456000円)が給付されるというものだが、思った以上にコロナ保険が売れ、累計403万人もの人が加入、台湾の人口(2360万人)の六分の一が加入したことになる。その結果、保険金と予想給付金のバランスがリスクレベルに達し、翌月、販売を急遽中止した。加入締め切り直前には保険会社の窓口に長蛇の列ができ、事務作業が処理不能になることを恐れたスタッフは、入り口のシャッターを下ろすと言う珍しい光景が各営業所で見られた。2021年5月、感染者が増え始めたが、6月下旬にはパンデミックは収束し、まさに間一髪で給付金支払いオーバーの難を逃れた。去年2か月間に販売した保険の総収入は20億元(≒91億円)にのぼったが、結局給付金総額は19.6億元(≒89億円)となり、収支はトントンという結果になった。

 

≪柳の下に二匹目のドジョウ?≫

2021年夏から台湾のコロナ新規感染者数は再び一桁から二桁台にまで減少した。これをきっかけに、他の保険会社も、2022年に、台湾産物の神保険に倣ってコロナ保険販売をスタートしたが、同時に他山の石として、給付金額を低く設定した。国民はコロナに対して潜在的に不安があり、新規加入者も順調に獲得、給付金支払い総額が想定内である限り、保険会社は儲かるはずだった。ところが、政府がゼロコロナ政策からウィズコロナ政策に転換したため、今年の4月終わりごろから台湾はかつてないペースで感染者が激増し、保険各社の給付金支払いも膨大なものとなった。と同時に給付金を抑制するため、新規加入者に対してあの手この手で売りしぶりが目立つようになってきた。ネット申込者に自筆の署名を求めたり、加入申し込み締め切りを突然早めたり、薬にイチャモンを付けたり、給付審査を厳しくしたりして、国民と当局から不評を買った。

 

得をしたのは誰?

金融監督管理委員会はこの状況を憂慮し、保険各社に対して広く加入者を受け入れるよう指導、その結果、保険各社は赤字決済となり、コロナ保険の販売を取りやめた。感染者が少ない時、つまり給付金支払い総額が抑えられる時は保険勧誘、感染者が増えたら、加入者抑制。委員会がそのことを叱咤すると、保険各社は、「当局の命令で売り始めただけ」と反発、それに対して当局は「そういったことは言っていない」と否定、水掛け論のまま真相はいまだに闇の中である。

今回の騒動で、コロナ保険、及び海外急病保険はすべて販売中止となり、また、法定伝染病のレベルが下がった場合、給付金が十分の一にまで減額されるかもしれないという事態になった。政府と保険会社と国民、いったい得をしたのは誰なのだろうか。

 

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