2022-07-15 政治・国際

台湾宇宙開発の飛躍へ ハイブリッドロケット打ち上げ成功

© ARRC のオフィシャルチャンネルにより 屏東県旭海

注目ポイント

台湾で初の衛星搭載ロケットの打ち上げが行われ、成功した。台湾では近年、宇宙開発への機運が高まっており、屏東県旭海に建設された発射場は、新たな観光資源としても活用されそうだ。

台湾で初の衛星搭載ハイブリッドロケットの打ち上げ実験が10日午前、台湾南部の屏東県旭海の発射場で実施された。

打ち上げられたロケットは、国立陽明交通大学の「先進ロケット研究センター(ARRC)」が開発した「HTTP-3A」の2段目。当初は今年5月に実施予定だったが、天候不良やシステムの異常により延期されていた。

高さ4.8メートル、重量365キロのロケットは現地時間の10日午前6時12分に打ち上げられ、約2分間、高さ約3キロ地点まで飛んだ。公共電視のニュースサイト「公視新聞網」によると、目標高度は12キロの予定で、今回は約3キロにとどまったが、収集したデータを分析し、次回実験の参考にするという。

蔡英文総統はロケットの打ち上げ後、「開発に携わってきた陽明大学の学生エンジニアや大学院生が貴重な経験を積むことができた」とFacebookでコメントし、「台湾の宇宙人材を育成するうえで重要な取り組みである」と関係機関への感謝を伝えた。

台湾では近年、宇宙開発への機運が高まっている。中央社によると、蔡総統は昨年9月、台湾北部の新竹市にある国家実験研究院国家太空中心(NSPO=国家宇宙センター)を視察した際に、台湾の宇宙産業は世界市場に進出する力を有していると強調し、宇宙産業は自身の第二期政権の柱である「六大核心戦略産業」の一つ、国防産業と関連性が高く、強化を進めるとしていた。

「太空科技長程発展計画(航空宇宙計画)」では2019年から2028年までの10年間で251億台湾元(約996億円)を宇宙開発に投入する予定で、今年5月31日には台湾にとって初めてとなる宇宙に関する法律「太空発展法(宇宙開発法)」が立法院の院会で可決・成立するなど、予算や法制面での整備が進められている。

なお、台湾の科学メディア「PanSci」によると、今回の実験が実施された「短期研究用観測ロケット発射場」は大型ロケットの打ち上げには利用されず、科技部(科学技術省)が出資する研究開発プロジェクトのテスト・検証で活用される。建設を巡っては宇宙開発法と原住民族基本法に基づいて地元の原住民(先住民)との合意形成がなされ、原住民の権利や環境保全にも配慮されているという。新たな観光資源としても期待が集まっている。

 

Advanced Rocket Research Center, ARRC のオフィシャルチャンネルにより

 

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