2022-07-15 政治・国際

スリランカのラジャパクサ大統領が海外逃亡 正式辞任表明せず甥の後継で「王朝」存続か

© Photo Credit: Reuters /達志影像 

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怒りを爆発させた群衆が大統領公邸を占拠し、治安部隊と激しい衝突するなど混迷が続くスリランカ。ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領(73)は、当初予定していた13日に辞任せず同日未明、軍用機でインド洋の島国モルディブの首都マレへ脱出。辞任を表明していたウィクラマシンハ首相(73)は急きょ暫定政権の大統領代行に就任し、非常事態を宣言した。その一方、大統領の甥が〝ラジャパクサ王朝〟の後継者として意欲を示している。

ウィクラマシンハ氏は首相だった今月5日、議会で国家の破産を宣言。4月から深刻度を増してきた同国経済は外貨が底をつき、原油や食料の輸入がほぼストップ。政府への抗議デモはスリランカ全土で連日起きていたが、今週に入り、デモはエスカレートした。

暴徒化した群衆は放水や催涙弾で鎮静を試みる治安部隊の列を突破し、大統領公邸になだれ込んだ。デモ隊は首相府も占拠した。地元メディアによると、13日にはデモ隊と治安部隊の衝突で1人が死亡、70人以上が負傷した。

一方、モルディブへ国外逃亡したラジャパクサ大統領に対し、現地在住のスリランカ人が中心となって抗議デモを起こし、大統領は14日、同地からシンガポールに向かった。最終目的地は不明だ。

大統領の海外逃亡後、スリランカは数時間にわたり、無政府状態となる混乱に陥ったが、政党幹部らが緊急会合を開き、野党勢力を含めた暫定政権を設置。ウィクラマシンハ氏を大統領代行に任命した。

そもそもスリランカの経済破綻は、インフラ整備のため中国など海外から借金を繰り返したことで、赤字体質の国家財政が長く続いてきたことや、ラジャパクサ一族による国家の私物化による汚職だとされる。対外債務の残高は、昨年末の時点で507億ドル(約7兆円)に膨らんでいた。

ラジャパクサ氏は19年の選挙で勝利し大統領に就任したが、15年までの2期10年にわたり大統領を務めた兄マヒンダ・ラジャパクサ氏(76)の政権で国防次官を務めた。兄弟合わせると13年間にわたり実権を握り、首相や閣僚に親族をあてるなど、一族支配を強めてきた。

その間、一族と中国の関係は強化され、中国企業が港湾や空港など大規模インフラ事業に進出。スリランカは中国から巨額の融資を受けたことで国の借金が膨張する一方、一族は私腹を肥やしたとして国民から批判を受けていた。

英紙ガーディアンによると、多くの国民から敵視されていたラジャパクサ大統領が13日、海外へ逃亡したとの知らせを受け、国民感情は安堵感と怒りに包まれた。

デモ参加者シニス・ヒンドルさん(27)は同紙に、「どれだけ卑怯者なのか」とした上で、「ゴタバヤ(ラジャパクサ大統領)は国民のカネで私腹を肥やし、国を破産させ、逃げた。この責任は取ってもらわないといけない」と語った。

大統領公邸があるスリランカ最大の都市コロンボでは、毎日数千人のデモ参加者が集まり、ラジャパクサ大統領の辞任を要求してきた。仲間たちと大統領公邸を占拠したニラクシカ・チャマンティさん(32)は、「ラジャパクサが辞任することを見届けるまで、必要なら何日、何年でもここにいる」と言い切った。

大統領についてチャマンティさんは、「常に専用機2機をスタンバイさせ、いつでもどこでも好きなところに行けるというラグジュアリーでVIPな誰もがあこがれるような暮らしをしていた」とし、「国家のカネを自分たちの贅沢に費やし、国民には知らぬ顔だ。私は彼に投票したが、国を奈落の底に突き落とした泥棒だということが分かった」と怒りを爆発させた。

ガーディアン紙は、国家の破綻で影響を受けなかった国民はほぼ皆無だと指摘。トゥクトゥク(三輪タクシー)の運転手たちはガソリンの給油に5日間並んだと話し、NGO団体はスリランカが近く飢餓のような状況になると警告した。

国の収入のうち観光と海外出稼ぎ労働者が、それぞれ約10%を占めるスリランカにとって、コロナ禍はこれらの業種にとっては致命的となった。ただ、19年の大統領選でラジャパクサ氏が勝利すると、一族への批判をかわすため無理な大減税に踏み切った。その間も対外債務の支払いに追い詰められ、農業に欠かせない肥料の輸入が不可能になると、大統領は昨年、突然「有機農業への転換」を打ち出し、国民から一斉に反発を受け、政権が一気に崩れ始めた。

これで長きにわたった〝ラジャパクサ王朝〟は終焉を迎えるのかと思いきや、兄ラジャパクサ氏の息子ナマル・ラジャパクサ議員(36)は米ブルームバーグに、失権したフィリピンの独裁者マルコス大統領の息子が今年大統領選で勝利したことに触れ、ラジャパクサ家も同じことが可能だと強気の姿勢を見せ、後継者の地位に意欲を示した。

 

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