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演説中に銃撃を受け、亡くなった安倍晋三元首相の告別式が12日午後、東京・港区の増上寺で営まれ、政財界関係者をはじめ、多くの国民がその死を悼んだ。葬儀には台湾の頼清徳(らい・せいとく)副総統も参列し、反発した中国は日本政府に抗議した。その中国の台頭に、安倍氏は早くから世界が直面するさまざまな課題を提起した指導者として記憶されるだろうと米紙ワシントン・ポストは記した。
安倍元首相の葬儀には、約260の国・地域と国際機関のトップらから1700件以上の弔電が寄せられた。海外ではニューヨークの日本総領事館に設置された記帳所にキッシンジャー元国務長官(99)が、パリにある日本大使公邸にはマクロン大統領が、そしてソウルの日本大使館には尹大統領らが弔問に訪れた。また、米国のブリンケン国務長官は追悼のため急きょ来日した。
副総統の頼氏を葬儀参列のため日本に派遣した台湾。1972年の日中国交正常化により、日本が台湾と国交断絶して以降、台湾からトップレベルの高官が訪日したのは、85年に当時の李登輝(り・とうき)副総統が中南米から帰国の際、日本に立ち寄って以来となった。
これに中国は不快感を示し、日本政府に抗議。ロイター通信によると、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は12日の定例記者会見で、台湾は中国の一部であり、「いわゆる副総統はいない」と主張。「安倍元首相の暗殺を受け、台湾当局はこの機会を利用して政治的操作を行った」と批判。「このような策謀が成功することはあり得ない」と語気を強め、弔問外交で実質的な日台関係の強化をけん制した。
ワシントン・ポスト紙は、世界の指導者たちから寄せられた哀悼の意の数々は、安倍氏が日本の憲政史上最長の首相として、政治と外交のキャリアを通して得た国際的な高い評価を反映していると指摘。それは大戦終結以降、東アジア地域に平和、繁栄、安全をもたらした国際秩序をより強固なものにするという、安倍氏の信念をたたえたものだと伝えた。
その中で同紙は安倍氏について、「自国の成長力と影響力を使った中国がその秩序を弱体化させ、またそれを何かに利用しようとする意図があることをいち早く理解した国際的指導者の一人だった」と指摘した。
米国など他国の指導者たちが依然として協調的な対中国「関与」政策に固執していた頃、安倍氏はすでに中国との長期的な競争に焦点を当てるよう、日本の外交政策を再調整していた。その上で、 「アベノミクス」として知られる経済プログラムは中国の台頭に対し、日本が国際的な対応を主導できることを証明するための政策の一つだったと同紙は解説する。
安倍氏の長年の外交政策顧問兼スピーチライターだった谷口智彦氏は同紙とのインタビューで、日本が成長を続ける中国に対して長期的に耐えるため、安倍氏は3つのことが必要だと理解していたと語った。それは日本が経済を強化させ、米国との同盟関係に再投資し、オーストラリアとインドの両国と手を取り合うことで、外交関係を拡大することだった。