2022-07-13

連載「いちにの算数いーあるさんすー」 台湾ルネサンス時評:台湾とパンダ

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像

注目ポイント

日本でも大人気のパンダですが、その愛くるしさとは裏腹に“外交の道具“という一面も持っています。神田桂一さんの連載、今回は少々込み入った台湾のパンダ事情についてです。


今日は、ちょっとほっこりする話題でもたまには書こうかと思う。動物園でもひときわ人気の動物がパンダだ。パンダと言えば、中国。中国の四川省の森の中だけに生息し、パンダを所有しているのは、中国だけである。

それを利用して、中国は、パンダ外交とも呼ばれる方法で、色んな国に、パンダを貸し出し、その国に友好な姿勢を示すと同時に、その国を囲おうとしてきた。

その国と関係が悪化すると最悪パンダを引き上げることもあるのだろうか(いまだにそんな例は見たこともないが)。

では、台湾にパンダはいるのか。正解は「いる」。

しかし、台湾でのパンダの歴史は浅い。それはもちろん中国との関係があるからで、パンダ外交をしていた中国から、パンダを寄贈されてしまうと、台湾独立派にとっては色々と都合が悪い。

ちなみに、日本にパンダが来たのは、今から50年前の1972年。日中国交正常化によって、その友好の証として、中国から送られたのが、ランランとカンカン。

台湾に話を戻すと、民進党の陳水扁時代から、パンダを寄贈される話はあったが、立ち消えになっていた。しかし、政権が国民党に移り、親中派の馬英九政権になると、さっそく2008年、團團(オス)と圓圓(メス)が寄贈された。

この寄贈、中国側からは、国内移動とされたため、当時、台湾独立派からは、ひとつの中国を認めたことになると、寄贈されることに対し反対意見も出た。しかし結局は受け入れることとなった。

この二頭、台北市立動物園で暮らしている。その後、子供である圓仔や、圓宝も生まれ、現在、4頭のパンダが台北市立動物園では、見ることができる。当然、人気者だ。ちなみに、團と圓を合わせると、「統一」を意味する言葉となり、これも、台湾独立派にとっては、嫌な意味を持ったので、反対したようである。

全然ほっこりした話題にはならなかった。

でも、パンダの前では、一瞬でも、国家同士の揉め事など忘れ、その可愛さにニヤニヤすることができる。そんな偉大な存在がパンダなのだ。

 

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