2022-07-12 政治・国際

安倍晋三氏銃撃事件の波紋-参院選は弔い合戦だったのか-

注目ポイント

7月8日、参院選挙応援演説中の安倍晋三元首相が銃撃され、同日5時過ぎ、死亡が確認された。日本の首相、または首相経験者の暗殺は憲政史上7人目である。今回の事件は、7月10日に行われた選挙の結果にどのような影響を与えたのだろうか。

≪自民党圧勝≫

7月10日夜、選挙結果がほぼ出そろった。事前の予想では自民党が勝利するだろうと言われていたが、いざふたを開けてみると、予想を上回る自民党の圧勝で、与党76人、非改選と合わせて248議席中過半数を超える146議席、改憲に前向きな維新、国民を合わせると、参議院の3分の2以上の議席である177議席を獲得する結果となった。1人区の当選者は与党28人に対して野党は4人、野党惨敗である。投票日の二日前に安倍氏が殺害されたことのショックで市民の気持ちが大きく揺らぎ、「同情票が増える」とか「弔い合戦になる」とか言われたが、この事件の直接の影響はあまりなかった。テレビ報道の街頭インタビューを見ると、今回の銃撃事件で投票を変えた人は多くはなく、その点、市民は比較的冷静に事件と選挙を切り離していたことがわかる。しかし一方では、浮動票層や、政治や選挙にもともと興味がなかった若者世代が、この事件をきっかけに選挙に興味を持ち、投票に行き、投票率を52.16%(前回参院選比約5%アップ)に押し上げ、結局、現状維持の政党として与党を選択し、この結果になったのではないかと思われる。

安倍氏が長年全力で取り組んできたライフワーク、「憲法改正」に向かってさらに一歩前進した形になった。


 

≪海外からも追悼≫

安倍氏の銃撃事件を受けて、アメリカ、ロシア、中国、韓国など海外からも続々追悼のコメントが送られてきたが、ここ台湾の蔡英文総統からもメッセージが届いた。頼清徳副総統は東京にある安倍氏の自宅を弔問した。

安倍元首相は、何回か台湾を訪れ、蔡英文総統や馬英九前総統ら政府要人と会ったり、李登輝元総統の葬儀ではビデオで追悼メッセージを送ったりした。またコロナ感染者が増えた際に台湾にワクチンを分けてくれたのも安倍元首相であった。去年台湾で行われたシンポジウムにオンラインで出席し、「台湾有事は日本有事」と発言、台湾への強い支持を表明し日台の絆を更に一層深めた。

安倍元首相死去を受け、日台交流協会(大使館に相当)前には弔意記帳ボードが設置され、多くの市民が記帳に訪れていた。また台北101や高雄の中鋼公司には安倍氏の死去を悼む哀悼のメッセージが映し出されたり、週明けには政府機関で半旗を掲げたりするなど、官民をあげて安倍元首相の死を悼んだ。

台北101安倍元首相の死去を受け、追悼ライトアップ


 

安倍氏の死去を悼む哀悼のメッセージ

≪国のリーダー暗殺は愚の骨頂≫

いつもどこでも太古の時代から、思想や信条の違い或いは憎悪などの理由で政治家の暗殺事件は繰り返されてきた。アメリカのケネディ大統領、韓国の朴正煕大統領、インドのガンジーなど、悲しい出来事は絶え間なく続いている。

日本では首相、又は首相経験者全67人のうち7人が襲撃によって道半ばで倒れている。1909年伊藤博文、1921年原敬、1930年濱口雄幸、1932年犬養毅(515事件)、1936年高橋是清と斎藤実(226事件)、そして2022年安倍晋三である。このうち原敬と濱口雄幸と犬養毅は首相任期中の遭難である。首相や首相経験者以外にも暗殺された政治家や、襲撃されたけど命はとりとめた人など多々あり、ほとんどの場合、事後の政局は襲撃者の思惑通りの結果にはならなかった。学習院大学の井上寿一教授は、政治家を襲撃しても政策を変更させるような影響はなく、むしろ逆効果である、と言っている。実際、1960年に社会党委員長浅沼稲次郎が山口少年に刺殺された事件でも、一か月後の選挙では大方の予想に反して社会党が大躍進している。暴力による強制的な現状変更の試みは、何の意味もない。

 

 

安倍晋三元総理大臣のご冥福をお祈りいたします 合掌

 

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