2022-07-12 政治・国際

国家破産宣言でスリランカが建国以来の危機 群衆が大統領邸を占拠、首相邸は放火全焼

© Photo Credit: Reuters /達志影像 protesters

注目ポイント

国家の破産を宣言したスリランカのゴタバヤ・ラジャパクサ大統領(73)は先週末、辞任の意向が発表されると、そのまま姿を消した。外貨不足で燃料や食料の輸入が困難になり、国民生活が破綻したことで怒りを爆発させた民衆は暴徒化。同国最大の都市コロンボにある大統領公邸に乱入して占拠し、首相邸には放火、全焼させるなど、1948年の建国以来の深刻な危機に直面している。

地元メディアによると、9日にはラジャパクサ大統領の辞任を求める数千人がコロンボの大統領邸周辺に押し寄せた。警察が放水や催涙ガスで制止しようとする中、群衆の一部がバリケードを破って公邸に侵入。ソーシャルメディアには、デモ参加者が公邸のプールで泳いだり、ベッドに横たわったり、室内で国旗を掲げたりする様子が投稿された。ラジャパクサ氏は乱入直前に退避していたという。

また、ラジャパクサ氏の兄マヒンダ・ラジャパクサ前首相(76)が5月に辞任した後を受け、首相に就任したばかりのウィクラマシンハ氏も9日に辞任の意向を表明。コロンボ市内にある首相の自宅は放火され、全焼した。

ロイター通信によると、抗議デモ激化を受け、国会議長は11日、ラジャパクサ大統領が13日に辞任すると明言。だが、ラジャパクサ氏本人からはこれまでのところ、自身の進退に関する直接的な発言は伝えられていない。ウィクラマシンハ首相は、全政党による暫定政府に政権を譲るとしている。

今回の政情不安のきっかけは、火力発電の燃料を確保できなくなったことから3月末に1日十数時間の計画停電を実施したことだった。4月になると、これに抗議して大統領辞任を求める平和的なデモが全土に広がり、連日各地で行われてきた。ところが5月になるとラジャパクサ派のグループがデモ隊と衝突。対立が激化し、多くの死傷者が発生する事態となった。

これを受けてマヒンダ・ラジャパクサ首相は辞任。新たに就任したウィクラマシンハ氏は6月22日、議会で「スリランカ経済は破綻した」と宣言した。政府はすでに4月、対外債務約7兆円のデフォルト(債務不履行)状態に陥ったと表明していた。

スリランカ中銀によると、6月のインフレ率は前年同月比54.6%上昇し、70%にまで高騰する可能性があるとしている。ハイパーインフレを抑制するため、同中銀は貸出金利を15.5%に、預金金利を14・5%にそれぞれ引き上げ、2001年4月以来最高となった。また、5月の段階で食品は前年同月比で58.0%上昇、燃料価格を含む交通費も同76.7%と急騰。各地のガソリンスタンドや食料品店では常に長者の列ができ、入荷待ちの状態が続いている。国連の世界食糧計画(WFP)は先月、人口約2200万人のスリランカで490万人が飢餓の危機に瀕していると発表。医薬品も不足しているという。

一方、国際通貨基金(IMF)によれば、スリランカの債務総額は18年の国内総生産(GDP)比91%から、21年には同比119%にまで上昇。そのうち、債務の5分の1を占めるのが中国だ。スリランカ政府は中国に債務再編を交渉したが、中国側は難色を示し、代わりに緊急融資を提示したと伝えられている。

中国が推進する世界的広域経済圏の構想「一帯一路」の重要拠点に位置付けられたスリランカは、中国から過剰な融資を受け、〝債務の罠〟に陥ったとされる。それに対し中国共産党系の英字紙グローバル・タイムズ(環流時報)は11日、「米国、西側はスリランカ危機への興奮を歪曲するな」との見出しで論評した。

同紙は、スリランカが対外債務により国家破産を宣言した今世紀で最初の国になったとした上で、同国がここ数年で、南アジアの中流~高級所得国から現状に至った理由は、外的要因と内的要因によるものだと指摘。外敵要因は大きく分けて2点だとし、コロナ禍によりスリランカの最重要産業である観光が致命的な打撃を受けたことと、ロシアによるウクライナ侵攻がもたらしたエネルギーと食料価格の高騰だとした。

一方、内的要因は、外的要因に対応できないスリランカ政府の農業と経済の過激ともいえる政策だと説明。外貨収入に依存するスリランカのような国は、世界経済のリスクに対応する能力が脆弱で、同国が経済破綻した理由は複数の原因によるものだと主張。

同紙はスリランカが中国による〝債務の罠〟にはまったとする西側の見解をけん制し、「米国や西側諸国が一帯一路構想を汚し、弱体化しようとする」と非難した上で、「大国によるパワーゲームにふけるための地政学的な興奮」を抑えるよう求めた。

 

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