2022-07-15 ライフ

日本と台湾を結ぶメディア編集長、田中伶さんが愛してやまない台湾とは【日台インフルエンサーから見る台湾-Vol.1】

注目ポイント

日台インフルエンサーにインタビューするThe News Lens Japanの連載企画。台湾好きのための情報を発信するウェブメディア「Howto Taiwan」の編集長であり、日本国内でできる台湾体験を紹介した『おでかけ台湾 in 東京・京阪神』(朝日新聞出版)の取材、執筆にも携わった田中伶さん。田中さんの視点から見た台湾や、彼女の原点にせまった。

衝撃だらけの台湾との出会い

「大学時代に交換留学生として訪れたのが、台湾を知る最初のきっかけでした」と語る田中さんの台湾体験は驚きの連続だったようだ。オリエンテーションで弁当と一緒に出されたお茶の甘さに衝撃を受けたことに始まり、現地で体験すること全てが想像を超えるものばかりだったという。

「週末になったら一緒に私の実家においでよ」と、一緒に寮生活をする、出会ってまだ間もない現地の学生から思いがけない誘いを受けたり、同窓会に参加させてもらったりと、日本では感じられない人と人の関係の近さや情に溢れた台湾人の国民性にグイグイと惹かれていった。当時の仲間はなかなか会えなくなった今でも「大切な友達」と、目を細めながら語る。

田中さんは、良い意味で周りの目を気にしない、台湾人の自由な国民性にも大いに刺激を受けた。日本にいると、何か新しいチャレンジをする時や、普通とは違った道に進もうとすると、周囲から必要以上に心配されたり色眼鏡で見られたり、どうしても周りの目が気になってしまうものだが、田中さんが知り合った台湾の人たちは全く違ったと振り返る。

友人の中には「ドリンクスタンドを始めて失敗したけど、へっちゃらだよ。また働けばいいのさ」とあっけらかんと語る"強者"がいたり、「私が結婚しないことを親は心配してる、だけどこれは私の人生だから」とサラッと言ってのける友人も。のびのびと、ありのままに自由に生きる同世代の台湾の友人たちは、今でも田中さんにとっての大切なエネルギー源。「多くの人が言うように、台湾の素晴らしさは人にあります」という田中さんの実感は、そんな大切な友人たちとの出会いに支えられているのだろう。

 

台湾と日本を結ぶメディア「Howto Taiwan」の創設

台湾への思い入れが強くなっていった田中さんは、2016年、小籠包やマッサージ、変身写真など、昔ながらのイメージが強く残っていた当時の台湾情報に疑問を感じ、「台湾が好きで、2回、3回と旅行をする、本当に台湾が好きな人に向けたディープな情報発信ができないか」と考え、同世代の台湾好きな友人と共に「Howto Taiwan」を立ち上げた。

以前スタートアップ企業でPRや広報の仕事をしていた経験も、内容を構成する上で大いに役に立ったというが、「Howto Taiwan」は、瞬く間に一つのポジションを築いていく。「まさにこういう台湾情報が欲しかった!」と、特に同世代の台湾好きからの反響が大きかった。市場を理解し、ニーズに応えるものを創造していくことは並大抵のことではない。「Howto Taiwan」が瞬く間に一つのポジションを築いていった躍進の裏には、運営チームの発想力はもちろん、留学時代から育まれた台湾への愛情や熱い思いが確実にある。

 

コロナ禍に直面し、あたらめて見つめ直したこと

メディアを立ち上げて4年が経ったころ、新型コロナウイルスの影響で日台の往来が不可能になり、台湾への取材が困難となった。田中さんも自身のメディアを今後どのようにするべきか真剣に悩んだという。一緒に立ち上げた友人とは何度も議論を繰り返し、そこでふと彼女が言った「私たちのしたいことは情報発信ではなく、台湾が好きな人たちが繋がれる場を作ることだよね」という言葉が、改めて自分達の原点を見つめ直すことになったのだと語ってくれた。

まず始めに取り組んだのは、台湾好きが集まるオンラインイベントの開催。150人分のチケットはあっという間に完売し、Howto Taiwanには再び活気が戻った。「大切にしていることは、一台湾好きである私たち自身が楽しむこと」と、田中さん自らの原点と向き合い、IT企業のPRや書籍の出版で培った経験をフルに活かしながら、自らの様々な引き出しを自由自在に駆使していったのだ。

 

『おでかけ台湾 in 東京•京阪神』に込めた思い

コロナ禍という閉塞感に満ちた世の中にあっても田中さんの挑戦は止まらない。「台湾に旅行にいけなくなった台湾好きの人のための情報発信を」という思いで制作に取り組み、2022年4月20日に朝日新聞出版から刊行した書籍『おでかけ台湾 in 東京•京阪神』には、東京近郊•京阪神にある約150件の台湾レストラン、カフェ、雑貨店など、日本にいながらにして台湾を感じられるスポットの情報を盛り込んだ。

単なる店舗情報だけではなく、店舗の歴史や店主のストーリーも丹念に描き、読み物としても楽しむことのできる台湾好きにとってはたまらない一冊になっている。取材時のエピソードとして、田中さんは西新宿にある麺線店「佐記麺線」のことを話してくれた。「麺線は台湾人の国民性そのものだと思える」と熱く語ってくれた店主は、もともと航空会社に勤務されていたが、台湾の麺線の魅力を知って、開業。麺線一筋に8年間も一人で店を切り盛りしてきたのだという。そんな「人」の思いにまで丁寧に触れているのは、台湾をこよなく愛する田中さんだからこそ。人を楽しませる以前に、「自らがもっともっと台湾を楽しみたい」という田中さんの思いが、インタビューを通じてひしひしと伝わってくる。これからももっと私たちをワクワクさせてくれる、次なる田中さんのチャレンジが楽しみでたまらない。

『おでかけ台湾 in 東京•京阪神』(朝日新聞出版)


<田中 伶 Profile>

ディープな台湾情報を発信するウェブメディア「Howto Taiwan」編集長。さらにAmazon旅行著書部門で1位を獲得した「おでかけ台湾」の著者。台湾への交換留学をきっかけに台湾に興味を持つようになる。著書『FAMILY TAIWAN TRIP #子連れ台湾』(地球の歩き方BOOKS)、取材・執筆『妄想Trip! #おうち台湾』『おでかけ台湾 in 東京・京阪神』(朝日新聞出版)


 

【日台インフルエンサーから見る台湾】は、台湾の情報を発信する日本人インフルエンサー、日本の情報を発信する台湾人インフルエンサーなど日本と台湾を繋ぐ架け橋となるキーパーソンから見る台湾、またはインフルエンサー自身の人生やマインドセットに迫るThe News Lens Japanオリジナルの連載企画。

 

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